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 二手に分かれた彼らに前後を挟まれる形で連れられ、階段の踊り場に移動した。  そこでどんなやり取りが行われたかはほとんど覚えていない。瀬戸の体が大きく揺らいだのを見て、手を上げられたのだと分かった。頬をさすり、なおも言葉で解決しようとする瀬戸を、長身の男子はもう一度殴った。しかしその直後、腹を押さえてうずくまったのは相手の方だった。続けざまに、瀬戸が右足を振りかぶるのが見えた。 「瀬戸!」  僕が声を発したのと同時に、ニキビ面の男子が瀬戸に飛びかかった。細身の瀬戸は簡単に突き倒され、組み伏せられる形になった。鈍い音と女子たちの短い悲鳴が聞こえた。  駆け寄ろうとして横腹に強い衝撃を受けた。息ができなくなり、足に力が入らなかった。 「おい、代われ! こいつ、舐めた真似しやがって」  歳はひとつしか変わらないはずだが、子供と大人ほどの対格差があった。そのとき頭にあったのは、瀬戸が殺されてしまうのでは無いかという恐怖だけだった。それを防ぐためには、手段を選んではいられなかった。
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