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 物心ついたときから、僕には不思議な力があった。それは物から熱を奪い温度を下げられるというもので、例えばコップの中の水を念じるだけで氷に変えることができた。  幼いころは手当たり次第に凍らせてしまっていたけれど、15歳になった今では対象の範囲や温度の下げ幅なんかもある程度コントロールすることができる。自分の周りの空気を少し冷やして夏を快適に過ごしたり、出先で買ったアイスクリームを氷点下に保ったり、というように。  加えて、温度に対して非常に敏感なところがあった。直接触れたりしなくても、物の熱を定量的に感じ取れるのだ。この性質は母に重宝された。火にかけた食材の内部温度や揚げ油の温度が、専用の機器なしで分かるからだ。  その精度も年を追うごとに高くなり、いつしか身の回りで熱が生まれたり消えたりすると、その大まかな位置や強さまで把握できるようになった。対象の範囲は熱の強度にもよるけれど、仮に自宅で2階の部屋にいたとして、1階の台所で誰かがガスコンロを使用したりすればすぐに感じ取れる。
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