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透哉 中学生編「るい」
ショタ/股縄責め/敬語受け
※ ※ ※
月に一度、躰を売ったら食べる分には足りている。
〈言い値の倍だすから、ちょっとした実験に協力してくれないかな〉
サイトで知り合った男にそう切り出された。
口調は丁寧だし声も優しい。
交換した写真も普通の会社員に見える。
「いいですけど」
透哉が承諾すると選択肢を与えられた。
〈一時間ずっと緩やかに責められるのと、短時間で強く責められてさっさと帰るのと、どっちを選ぶ? 金額は一緒〉
耐久力と瞬発力のどちらが得意か訊いている──のだろうか。
透哉は病気がちで体力に自信がない。
効率的に考えても──。
「痛くなくて痕とか残らないなら──短時間で」
〈わかった。じゃあ、地図を送るから来てね〉
立川なら近い。
電車一本で行ける。
倍の報酬をくれるなら今年はもうウリをせずに済むだろう。
※ ※ ※
男の自宅──生活感がないから仕事場かもしれない──に着いたら驚かれた。
「え、コート着てないの。この寒いのに。子供は元気だなあ」
初対面の男は目を丸くした。
透哉が「持ってなくて」と応えると「いや、色々、皆、事情はあるよね、うん」とばつが悪そうにする。
他にも何か言いたげだったが飲みこんだようで話題を変えて男は笑った。
「写真より可愛いなあ。もっとちゃんとしたの撮ればいいのに」
そう言いながら縄に何か塗っている男を見て、縛られるのかと思い、透哉は少し怯えた顔をする。
男は察したらしく「縛ったりはしないから」と穏やかな声音で言った。
「ちょっとしたゲームだと思って。もう二十人くらい協力してもらってるし安全だよ。痛いのと痕がつくのは駄目だったよね」
「──はい」
「上半身は使わないから、下だけ脱いでくれたらいいよ。それで台に乗ってね」
室内は暖かかったので上もブレザーは抜いてシャツになり、壁際にある高さ一メートルほどの台に乗った。
正座を崩したようにぺたりとすわると「女の子座りできるの。躰柔らかいね」と言われ、透哉は、むっとして脚を伸ばす。
女の子っぽいと言われることに透哉は抵抗がある。
「あれ、ごめんね。冷やかしたんじゃなくて感心したんだけど。僕、躰硬くって──あ、丁度良いからそのまま脚の長さ測らせてね」
男は測り終えると、今度は縄を片手に部屋を横断し、慣れた手つきで壁のフックや、何か機材に引っ掛けて回る。
あちこち経由した縄は台上の透哉のところにまで届いた。
「この縄を跨いでね。痛くない素材だしオイルも塗ってあるから」
──あ、まずい。
これ苦手かも、と透哉は動揺して男を見た。
女の子っぽいことがいやなのに、何故か透哉の躰は、男性器そのものに比べ、乳首や尿道、会陰、穴など、女性と共通の箇所に強く反応する。
女みたいでいやだという先入観があるから余計に感じてしまうのだろうか。
「痛くはないから」
不安そうな透哉を男が促す。
おそるおそる縄の上に座ると先ず陰嚢にあたり、次いで会陰に軽く擦れて腰が小さく揺れた。
「ぁ、ゃ──ッ」
苦手なところにぬめった感触の縄があたっていることが怖くて躰が竦んでしまう。
縄になるべく触れたくなくて殆ど正座に近い状態でいる透哉に男が言う。
「姿勢崩していいよ。縄は手で触らないでね」
「──はい」
膝を崩したら、縄に会陰を擦りつけてしまうことになるので、そんなことはできなかった。
「じゃあ、今から縄が、少しだけ振動するよ。はじめるね」
「え」
青ざめた透哉を見て、男は「ほんの、少しだから」と言い直した。
縄が途中を経由している機材に仕掛けがあるようで。
縄を巻き取って張り具合を調整していく。
股間に密着するぬめる縄が巻き取られ会陰を撫でる。
刺激を減らしたくて腰を浮かせると、縄の位置も上げられ逃げ場はなかった。
「──ッ、んっ」
縄がぴんと張られたのを確認されたのち、股間に僅かな振動がきた。
「──っ、ぁ」
確かに男が言うとおり、ほんの少しだけ、だと思う。ローターより緩いくらいの。
けれど、透哉は、会陰を絶えず刺激される不安に心細げな顔をした。
「痛くないよね? 痕がつくと約束を破ってしまうし──一応、オイルを足しておこうか」
男は透哉に近づくと、ゆっくり脚を開かせ、股間の縄を少し外側に引いて隙間を作る。
縄が鼠蹊部にずれてくすぐったい感覚に透哉は小さく息を吐いた。
「──っ、ん」
恥部に横からオイルを流し込まれる。
丁重に扱ってくれているのは解る。口調も説明も丁寧だし、気も使ってくれて、たぶんこのオイルも冷たくないように温めてくれている。
でもその優しい配慮が透哉には苦しい。
雑に扱われたほうがましだった。
痛くないかと確認されたのに透哉が何も返さないので、男は再度穏やかに尋ねた。
「縄きつい?」
引っ張って間にオイルを入れられるくらいなのだから、きついわけはない。
「い、え──」
終わらない会陰への刺激を堪えて何とか応える。
オイルが足されて緩くなった刺激は愛撫されているかのように感じられ、透哉は顔を赤くして躰をよじった。
縄の振動から少しでも逃れたくて躰を前屈みにすると、陰嚢が縄に押しつけられ、焦って腰を浮かしたら、今度は後孔が縄に擦れる。
「ぁ、ん──ッ」
びくんと大きく反応した透哉を、男は少し笑って見下ろしながら「説明の続きいいかな」と訊いた。
口を開くと変な声が出そうで、透哉は首を縦に振って肯定を示す。
「この鍵──ここに引っ掛けておくから。その台から降りて、ここまで来て、取れたら終わり」
男は歩いて部屋の扉付近まで遠ざかり、ドアノブに鍵のチェーンをぶらさげた。
台上の透哉より十メートル程離れた位置だろうか。
ドアのすぐ傍まで縄が張られているから、移動中もずっと刺激を受けざるを得ない仕掛けだ。
「君は選んで良いよ。そのままそこにいても一時間後には終わり。鍵を取るのはきついだろうけど早く終わる」
──どうしよう。
このまま一時間、自分は耐えられるだろうか。
まだ五分と経ってないだろうに脚が震えてくる。腰が揺れてじっとしていられない。
一時間も台の上で感じてる様をじっくり観察されるなんてごめんだと思った。
早く解放されたい──けれど動くと刺激がどう変わるのか予測できない。
さっきは迂闊に動いて酷い目にあった。
──どうしよう。
とにかく一度台から降りて様子をみてみようか。
そっと片膝を立てると縄の位置が変わり会陰と後孔の両方が擦り上げられた。
「ぁ、やっ──」
思わず手で縄を掴むと振動が少し抑えられ男が叱る。
「手で掴んじゃ駄目だよ。ルールが変わって比較ができない」
「──すみま、せん」
手を離すと、抑えられていた縄が反動でぴん、と弾かれ強く会陰を押し上げる。透哉は身悶えた。
「ゃっ、ぁあッ」
片膝を立てた中途半端な姿勢でいるのもつらい。
くちびるをきゅっと結び、刺激に耐え、何とか透哉は台を降りて立つことができた。
縄の位置が思ったより高くて股間に深く入り込み、強い振動がクる。
「ん──ッ、く」
つま先立ちになっても、ぎりきり縄に触れてしまいくすぐったくて堪らない。
「ぁ、だめっ──」
かといって普通に立って歩いたら股間をぐりぐりと縄に押しつけることになってしまう。
もう早くこの状況から逃れたくて不安定な足の先だけでゆっくり踏み出す。
縄に擦れる陰嚢への甘い刺激で内腿が震える。
「ぁっ、これ、だめ、です、むりっ──」
耐えきれなくて腰を落とすと、会陰にぬめりながら振動する縄が食い込んだ。
「ひっ、や、ぁ──」
仰け反るとさらに会陰を押しつけてしまい、透哉は悶絶した。
「──ッ、むりっ、ぁ、あぁ」
「いいよ。無理そうなら台に戻ったら少し楽だと思うよ。別に絶対鍵を取らなきゃいけないゲームじゃない。取るかどうかは君の選択だよ」
「もぅ、どっちにも動けな、い、ですっ、んっ──」
もう勝手に腰が揺れてしまう。
自分から縄に股間を押しつけているのが恥ずかしいのに止められない。
「とめ、て。振動、だけでいいから、とめてくださ、い、むりっ、ぁあッ」
「同じルールで統計とらないと駄目だからね」
もうルールを守る余裕もなくて、縄から躰を外そうと、片脚を後ろに上げた。
けれど縄の位置が高すぎて陰茎をまんべんなく縄に擦りつけることになり、透哉は悲鳴をあげた。
「あぁぁ、だめっ──です、とめてっ──」
体勢を立てなおすために、両脚を再び床につけると、ぐり、と会陰が押しあげられ前立腺が戦慄いた。
「や、何、ぁあッ」
縄の途中に結び目の瘤が作られている。
思わず後退すると、同じ瘤が敏感になった後孔を擦り上げた。
「あぁッ、やっ、むり、ですっ、とめて、ごめんなさい、ぁ──」
もう脚が震えて崩れ落ちそうだった。
前に倒れたら陰茎を縄に晒すことになってしまう。手で縄を押し下げようと突っ張るがぴんと張られてたわまない。
「こら。手を使っては駄目だってば」
「だって、もぅ──ごめ、ごめんなさい、とめて、だめっ──」
苦手な会陰を延々と責められてもう耐えきれない。
こんな仕掛けでイかされるなんて許せないのに──。
「止めてって言われたら、他の子は、止めてあげてきたんだけど。君、可愛い顔して悦がるから、止めたくなくなっちゃうね」
──酷い。
もうルールになんか従う気になれず手で体重を支えていると、男に腰をぐいと掴まれ縄の瘤に押しつけられた。
そのまま、ぐりぐりと前後に揺すられ、陰茎も陰嚢も会陰も後孔も、否応なく無機質で無慈悲な振動に擦られる。
「あ゛ぁぁッ──離し、て、もぅ──」
さらに男は、前のめりに逃げる透哉の肩も押さえつけた。
前傾を強いられ陰茎の先の尿道口を震える縄が撫でる。
透哉の腰が跳ねた。
「や゛ッ、離し、て、くださ──あぁ」
意識がずる、と自分から離れたのが解った。
歯医者で歯を抜いたときに似ている。
部分麻酔の──。
口内を触られている感覚はある。
歯をごりごり何かされて、抜こうと引っ張られるのも感じる。
でも痛くはない。
何処か麻痺している。
──今も。
もう刺激は厚い被膜を通してくらいにしか感じない。
男の声も振動音もとても遠い。
水の中に自分がいるようだ。
※ ※ ※
「鍵、確かに。お疲れ様」
男のその一声で感覚が戻った。
「君は、自分で宣言したように行動したね」
そうだ、電話で。
──短時間のほうを選んだ。
男は鍵のチェーンを指先で回しながら訊く。
「思考実験って知ってる?」
「──いいえ」
「有名なのだと──トロッコが線路を走っている。その先には五人がいる。五人がいる手前に分岐点があって、君はそこにいる。君は方向を切り替える操作ができるが、切り替えた先の線路には一人がいる──どうする?」
「──切り替えます」
「どうして?」
透哉には数学の問題のように感じられた。
「だって、五人死んじゃうより、一人のほうが、四人少なくて済むから」
「うん。でもそれって、今、頭の中だけで考えたことだよね。実際にそうなったとして、切り替え操作、自分にできると思う? 君の行動で一人殺すんだよ」
透哉は解らなくなった。
事故を見ているだけなのと、実際に手をくだすのでは、確かに重みは違う──気がする。
それに、本当にそんな場面に出会したら焦って何もできないかもしれない。
「このトロッコ問題は、思考した選択肢と、実際の選択肢を比べるのは不可能だよね」
「──はい」
実験で人を殺すわけにはいくまい。中学生でも解る。
「でも、さっきやってもらった規模くらいなら、ある程度のストレス状態で、思考と実際の行動を比べられる」
──だから。
電話で事前に聞かれてたのか。その通りに透哉が行動するかを見ていた。
男が「僕は、緊急時に人間って、そんな想定通りに行動できないよなって思っていて」と言うので透哉は慌てた。
「あ、じゃあ、すみません。僕、言った通りになっちゃいました」
しかも、あの変な意識状態にならなかったら、鍵を取ることはできなかっただろう。
「忖度されても困るよ」
男は笑う。
近頃何度も経験しているあの状態をなんと説明したら良いのか。
どんどん酷くなっていったらどうしよう。
「お医者さん、なんですか」
「臨床じゃなくて研究だけどね。診療には携わってない。僕の専門は、神経科学とか脳科学。これは本業ではなくて副業だけど」
透哉には解らない単語が多かったが、診療していないのならこの飛んでしまう意識について相談するのはやめておこうと思った。
「本業は今、人間を斜めにしてる」
「斜め?」
「人間逆さにしたら躰に悪いでしょ?」
それは、頭に血がのぼって気分が悪くなる──だろう。
「じゃあ、何度の傾斜から躰に悪いと思う?」
「え」
寝ているときは九十度なのだから、そこまでは大丈夫──なのだろうけれど、そこから先は解らない。
「解らないからね、実際やってデータをとる。面白いでしょ」
本業でも副業でも実験しているのだから、余程すき──なのだろう。変わった人だ。
「お金と。これも持っていって。僕は車だし」
厚い封筒。さらに高そうなコートを男に羽織らされた。
透哉には大きくて袖がだいぶ余る。
「躰が小さいから、ぶかぶかで可愛いよ」
男は室内を片づけながら透哉に語りかける。
また実験の話だ。本当に余程すきなのだろう。
「美人と不美人の履歴書をいれた封筒をそれぞれ用意して、拾った人が届けてくれるかの統計を取ったの。美人は断然回収率が高かった。やっぱり美人は親切にしてもらえて人生得だよね」
──親切? さっきあんたは可愛いからって止めてくれなかった癖に。
透哉の中で喉元まで出かかった言葉。
大人相手に言い返すことはできなかったが、黙った透哉の胸の裡を男は正確に汲みとった。
「そうだった。意地悪したね。ごめんね。つい、可愛いくて」
今更謝ってもらったって。
あんないやな目にあったのに。
──羨ましいなら代われよ!
透哉の心の中の激昂はとまらない。
この姿でいるのは自分が望んだことじゃない。
もっと大きくて強そうな外見だったら舐められたりしないのに。
──代わってくれよ!
透哉は男にコートを無言で突き返して部屋から駆け出した。
※ ※ ※
「おい。一人でうろうろしてると襲われんぞ」
昨日から意識は出たり戻ったりを繰り返している。
昼休みが終わったチャイムも類の声も遠くに聞こえた。
──まるで水の中にいるようだ。
「おい」
類に肩を掴まれてやっと現実にピントが合った。
屋上のフェンスの外側に。
三十センチほどのコンクリート部分がぐるりと張り出している。
透哉はそこに立っていた。
見かけて隣に来たのだろう類も横にいる。
下を見ると校庭に面していない方角らしく民家の屋根が並んでいた。
「──あ、ぁ」
目が回りそうだった。
貧血でも起こしたら落ちる。
それどころかくしゃみをしてバランスを崩しても──。
「下を見んな。俺のほう見とけ」
声のほうをゆっくり向く。
類と目が合う。
怪訝そうな顔をしている。
自分だって何でこんなところにいるのか解らない。
「戻りたいの? 落ちたいの?」
「こわ、こわい」
震えて上手く喋れない。
両手首をハンカチできつく結ばれた上で、類の首に引っ掛け、背中に負ぶさるよう言われた。
「布裂けるかもしれないから過信してぶら下がるなよ。自分でちゃんと掴まってろ。念の為の保険だから」
広い背中。
類は二人分の体重を物ともせず、身軽にフェンスを超えた。
きつく結びすぎたらしく、透哉の手首を縛ったハンカチを類がほどけずにいる。
その苦戦している大きい手を見ながら透哉が訊く。
「四月生まれ?」
「五月だけど──何で?」
「類は躰が大きいし、そうなのかなって。五月でもだいぶ早いほうだもんね──三月なんて一番不利だよ」
ハンカチをほどくのを諦めた類が、歯で裂いて無理矢理に引っ張る。
「三月生まれなんだ?」
「そう」
透哉の両手首には赤い痕が残った。
「小さいのも可愛いのもいやだ」
昨日、大人に対して言えなかった言葉が今ごろでてきた。
「立川の先生だろ? 悪いことしたって──気にしていたよ」
類にそう言われて透哉は躰を強張らせる。
──知ってる。何で。
どうして。
実験の内容を類が知っているのかもしれないと思うと、自分の痴態を思い出し頬が赤くなった。
立って駆け出す透哉を、後ろから類が抱き込む。
「いや、ごめん。ええと。有名だから、あの先生。俺も何度もお世話になってるし。金払い良いし、優しいし」
類の腕の中で透哉は踠いた。
悪い人ではないのかもしれない。
帰って確認した封筒には倍どころか五倍近く入っていた。
春まで食べ物に困らない金額。
ずっとおとなしく台上にいれば良かったかもしれないのに鍵を取ろうとしたのは自分の判断だ。強制はされていない。
自分を揶揄って腰を手で押したのだって、時間にしたら、たぶん十秒もない。
最後にされた実験の話も容姿を誉めてくれたつもりだったのだろう。
でも透哉には許せなかった。
「お前、制服着てったんだって? 身元割れるからやめろよ」
「離してよ──制服着ていくとチップもらえること多いから」
「馬鹿か、駄目。やめろ。危ない」
類が透哉の頭を掴んで、顔をあげさせた。
「本当にやめろ」
何をさせられたか──どこまで類に知られているのだろう。
恥ずかしくて透哉は目を背ける。
類が、透哉の腰を引き寄せて下着の中に手を入れた。
「何で、やっ──」
会陰を優しく撫でられて確信する。
やっぱり昨日の男から聞いているんだ。
顔が羞恥で赤く染まる。
透哉は膝から崩れ落ちた。
※ ※ ※
類は、透哉の弱いところはもうだいたい知っている。
本人がその箇所を女っぽくていやだと気にしていることも──。
「確かに、乳首はちょっと女っぽいかもだけど。尿道とか会陰とか穴とかさ、結局は前立腺に繋がってんだから、それは女にないじゃん。表面の器官が共通なだけで」
柔らかい透哉の会陰を刺激すると、内股になって座り込み類の上着にしがみついている。
「気にするなよ。気にしてるから余計、過敏になると思うよ」
透哉の場合、なかでも会陰は少し反応が違うと類は思っている。
──遮らない。
いや、力が抜けてしまうようなので遮れない──のかもしれない。
いやがらないわけではないのだけれど、やめてとは言わない。
表面上はただの皮膚で──直接的でないぶん刺激が緩いからかもしれないけれど。
どうやら、いつも、欲しがる気がする。
そこを触られると透哉は誘引されてしまう。
挿れたくなるのか、イきたくなるのか、解放されたいのか、判然とはしないけれど。
気持ちが良いからもっと長引かせたいとか、そういう余裕は全くない幼さで。
感じることを緊急事態だと捉えた自意識が、早く終わらせて平常時に戻りたいと泣き喚く。
類には、その透哉の様子が可愛らしく感じられる。
黄色い嘴の雛がぴいぴいと餌をねだっているように見えて。
「ここ、昨日、弄られて、我慢できなかったの?」
声をかけると、類の上着を掴む透哉の手に一層力が入った。
赤くなった顔で、肩を上下させている。
そっと透哉の陰茎の輪郭をなぞると勃ちあがって震えていた。
「──っ、く」
「いいよ。貸すよ、手でも口でもナカでも」
会陰をまるく指であやすと腰をよじって声にならない吐息が漏れた。
聞こえてはいるんだろうが、返答する余裕がなさそうだ。
もう互いのズボンを下着ごと膝までおろして誘導した。
唾液で濡らす。
「いいよ、挿れて。すきにしな」
透哉のものが、ずるずるとナカに入ってきて──不意に途中でとまった。
透哉の瞳が不安そうに揺れている。
息が荒い。
「何? 体勢きつい?」
別に何度もヤったことあるのに。
類が透哉の腰を引き寄せて奥まで飲み込むと「ぁ、類、待っ、てっ」と抵抗して首を振った。
「でそうならだしていいよ?」
「ゃ、ちが、ぅ、待っ、るい──」
何故か狼狽えている透哉を、類が腕をのばして抱きしめたら、殆ど動くことなくそのまま痙攣した。
そのびくびくと震える様子がいつもの透哉よりも脈動感をともなっていたように類には思えて──。
──もしかして。
透哉が真っ赤になった泣きそうな顔を隠して逃げ去ろうとするのを片手で捕まえる。
その反応が答えだと思った。
──もう訊かなくても解る。
類が片手は透哉を捕らえたまま、空いた手で自分のナカを掻きだす。
透明に近い白っぽい粘液がずる、と零れた。
──はじめて。
透哉は真っ赤になって俯いて何も言えずにいる。
類は、掻きだしたとき指についたぶんを舐めた。何となく勿体なくて。
「ちょっと、やめっ──」
透哉が類の腕を掴んだ。
目が合う。
類が笑った。
「十三? 誕生日三月なら十二か。早いほうじゃん。ちゃんと男だって。余計なこと気にすんなよ」
「いわ、言わないで」
慌てているのか透哉が変なことを口にする。
「誰に言うんだよ。言わねぇよ。何を心配してんの」
「見な、いで」
今は上着で隠れて別に何も見えてないのに。
動揺しているのか意味が解らない。
真っ赤な顔を両手で覆って。
乱れた服装でぺたりと女の子座りをして。
可愛い──とか口にしたらまた怒るんだろうな。
類は上半身を屈め、透哉の脇腹にくちづけして小さな痕をつけた。
了
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