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「ミヤ! ミヤ! 先生! 早く先生を呼んで!」
ママの大声が聞こえる。ちょっと、うるさいなあ。なにをそんなに慌ててるのよ。
「ミヤちゃん。大丈夫ですか? わかりますか?」
目にライトをあてられる。まぶしい。知らない男の人の声だった。
「名前、言えますか?」
なんの試験だろうか。面倒くさいな。
「田中ミヤ」
よくわからないまま質問に答えた。続いて投げかけられたのは、生年月日と住所だ。いったいこの人はなにを知りたいのだろうか。私がすべての質問に答えると、その男性は私の顔からライトを外し私以外の誰かに言った。
「もう大丈夫です」
「よかったあ。ミヤ! 本当に一時はどうなることかと思ったのよ」
ライトの代わりにママの顔が大写しになる。あれ? ママ、泣いてる?
「ねえ、どうしたの?」
私が聞くと、ママは泣きじゃくりながら口を開いた。
「あなた、一ヶ月も目を覚まさなかったのよ」
「え? どういうこと……?」
「まだ記憶が混濁しているのでしょう。なにせ、目を覚ましたばかりなのですから」
そう言ったのは先ほどの男性。
「ですが、大丈夫です。じきに意識もはっきりしてきます」
声の方に目を向けると、その男性は白衣姿だった。白衣。ということは、お医者さん? っていうことは、ここは病院?
「あれ、私、どうして……?」
「あなた、脇見運転の車に跳ねられたのよ。それで、今の今まで一ヶ月間も意識が戻らなかった」
「あ……」
そこでようやく思い出した。そうだ。あの日、私、待ちあわせ場所に向かっていたんだ。
「コナンは? アキラは?」
身体を起こす。左手以外はスムーズに動いた。視線をやると左上腕に一本チューブがついていた。
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