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 三日後、無事に検査結果も問題なしということで、私は一ヶ月間入院していた病院を出ることになった。もっとも、その大半は記憶がなかったから、実質数日間の入院という感覚だった。この期間が長いか短いかと言われたら、私の体感では明らかに短かった。入院中は塾に行けないぶん、自分で受験勉強を進める必要があったのだ。朝から晩までアキラからもらったテキストと格闘していた。消灯時間をすぎても卓上ライトで手もとを照らして勉強し続けた。あるとき、見まわりにきた看護師さんに驚かれてしまった。 「きゃっ。こんな時間まで勉強してるの?」  私は、どうしても夢を叶えたいんですと答えた。すると看護師さんは「本当はいけないんだけど」と言って私にお茶とお菓子を差し入れしてくれた。 「これ、ナースステーションでみんなで食べるおやつ。本当は患者さんにあげちゃいけないんだけど、内臓に不調があるわけじゃないから特別ね」  そんな気づかいが嬉しくて、私もこんな看護師さんになりたいとあらためて思った。  退院した私は、ゴールデンウイークが明けた翌週から学校に行くことなる。受験のまえにちゃんと卒業しなければ、看護師になるのなんて夢のまた夢だ。 「看護学校は倍率も高いし簡単ではないぞ。かなり努力をしなければいけない」  二年生最後の進路相談で、担任からはそう言われていた。塾のテキストもこなさなければいけないが、とりあえず学校の授業も一ヶ月ぶんの遅れをとり戻す必要があった。 「車に気をつけなさいよ!」  午前七時四十分、背中全体にママの声をあびながら玄関を出る。家のまえには、茶髪の幼馴染が立っていた。 「アキラ」  暑がりの幼馴染はカーディガンの袖をまくっている。 「また事故にあったりしたら、おれの心臓がいくつあっても持たない。しばらく、おまえと一緒に学校に行くことにする」  やさしいというか、お節介というか。学校までの距離は徒歩でだいたい三十分。私たちはならんで通学路を歩いた。
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