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家から数百メートル離れたところに交差点がある。交通量はわりと多い。
「ここをわたっているときに私……」
そう思った瞬間、耳の奥で自動車の急ブレーキが聞こえた。それが私に迫ってくる。凶悪なヘッドライトが私を照らす。目のまえが真っ白になった。身体の力がふっと抜ける。あっ……
「おいっ。大丈夫か、ミヤ!」
なにかに身体を支えられる。
「きゃああああああああ!」
私は絶叫した。怖いこわいこわいこわい。吐き気とともに胸の奥から感情がこぼれてくる。
「おい、落ちつけ。落ちつけ、ミヤ!」
その言葉で意識がつながる。私はアキラの腕にかかえられていた。
「あれ? 車は? 私、ぶつかってない?」
「なに言ってるんだよ。大丈夫だ。まだ横断歩道もわたってないだろ」
「そ、そうだよね……もう大丈夫」
そう言って一人で地面に立つ。アキラは私から手を離した。目のまえの信号は青。車も遠くの停止線で停まっている。大丈夫。つっこんでくる脇見運転の車などいない。だけど、私は足が動かなかった。その場に立ちすくんでしまう。
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