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その車は政府関係者の車だったからだ。おれは永田町に何度も足を運んでいたからわかる。あれは、現職の外務大臣である大曽十を送迎している車だった。
いったいどういうことなのかと思っていたが、その後、最初のゾンビに関して政府は行方不明という声明を出しただけだ。
おれは不審に思い、関わりのあるテレビ局や新聞社にこの話を持っていった。しかし、どこでも一蹴された。
「最初のゾンビなど存在しない」
みなが口を揃えてそう言ったのだ。こうなるとフリーランスは弱い。どこもおれが一番に手にした情報を買ってくれない。それならば個人で動画サイトを使って暴露でもしようと思い、チャンネルを立ちあげたがアップロードした瞬間にアカウントは凍結された。おれのなかでさらに疑念が湧いてきた。
一方で、日本国民は大きな混乱を起こすことなく不自由になった日常をできる範囲で謳歌していた。月に一度の検査とワクチンを努力義務にし、新しいワクチンが開発されれば、人々が殺到し行列ができる。不要不急の外出が聞いてあきれる。六フィートの距離が聞いてあきれる。
たしかに、今現在、人々のゾンビ化はある程度抑えられている。しかし、それはあくまで「ある程度」なのだ。百パーセントではない。その証拠に、テレビは毎日、被害者の数字を発表し、一週間おきに有名人のゾンビ化がニュースになる。
こう見えて、おれはジャーナリストだ。売れないフリーの弱小だが、正義の味方になりたくて、子どものころからの夢をなかば強引に叶えた。
企業に就職はできなかったが、企業に属していないからこそ自由に動けるということもある。おれはその日、人の流れに逆らってある場所に向かっていたんだ。
◯◯製薬会社。ここは先ほどのワクチンを卸している政府主導の製薬会社だった。ロードサイドに建つだだっ広いラボ。その広さは約十六万平米。
おれがこの場所にきたのには理由があった。この場所に大曽十外相が例の車に乗って頻繁に出入りしているという情報を得たからだ。
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