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ひょんな事から
そんな憧れのカイ先輩に偶然。
ばったり会った。
なんてのは嘘。僕は毎朝学校の自転車置場で待ち伏せをして顔を見るのが日課だ。
「あれ?君…。
うちの部の一年生?だよね。」
「はい…。名前、なんだっけ。」
なんだ、僕の事、顔だけは知ってたんだ…。
まあ名前までは知らないか。別にそんなの、驚かない。
「只野です。」
「あぁ、只野くんね。
なんかよくここで会うよね。
時々目が合うし。」
「え?」
それも知ってたのか…
「時々って言うか…ガン見してくるもんね。」
「え…?あ…。っと…。」
うわ。恥ずかしい…。
「ん?違った?」
「はい。いえ、まあ…。目が、行くかな。だって背が高いしイケメンだから目立つし。先輩はみんなの憧れだし。」
「憧れ?俺?」
「そう。僕もそんな風になりたい。だから、つい…」
「そっか。ま。悪い気はしないわぁ。」
「あの人彼女…?ですか?今度の」
「ん?あぁ…。今度、か。」
思わず言ってしまった。嫌みに聞こえたかな。
「いいですね。」
「欲しいの?」
「何が?」
「何って、あの彼女。」
欲しいのは彼女の方じゃない、なんて言えない。
さっきまで隣にいた女の人の背中をチラリと見る。マナミさんは最近先輩とよく一緒にいる。
「付き合ってって言われたから付き合ってるだけ。」
「付き合ってって言われたら誰とでも付き合うの?」
「まさか。俺だって好みはある。
だけど流石に君に言われたら悩んじゃうな。」
「はい?それどういう意味?」
え?うそ、それも知ってた?
「そのまんまだよ。
だって好きでしょ?俺の事。毎日待ち伏せしてるよね?」
「別に好きじゃ、ないです。憧れてるだけです。ただの憧れ」
あわてて否定した。
「ただの憧れ、ね。只野くん…」
なに?今の笑うとこ?名前、軽くいじられた。
「そもそも男同士なんだし。
憧れと好きとは違うから。」
「そっか。でも嫌いじゃ無いだろ?」
「嫌いじゃ…ないですけど。」
「俺も嫌いじゃないよ?
じゃあ試しに付き合ってみようか。俺たち。」
「は?試してみる?
なに言ってるんですか!」
「ははは。冗談だってば。
なにムキになってんの。
面白いね。
ただの只野君。」
なんだ、またからかわれたのか。
「ふざけないでくださいって。
僕は免疫が無いんだから。
どうしていいかわからないし困る。」
「確かにその顔、困ってる顔だ。
相当面白い。」
「僕は面白くない。」
「免疫がないって?どういう意味?」
「はい?ぼ、僕はまだ人と付き合ったことがないからそんな話されても答え方がわからない。って意味です。」
「へー。付き合ったことないの?
マジで?じゃあ練習、してみる?」
「はい?」
まるで意味がわからない。
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