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僕と先輩はそうやって時々、先輩が暇になると僕の恋のレクチャーだと言ってキスをする仲になった。
突然、僕にそんな風にしては決まってこう言うんだ。
『練習だよ、ただのキスの練習。只野君。』
その度に僕はこれがいつまでも続いたらいいのにって思ってた。
そう。
いつの間にか本気で先輩の事、好きになってた…。
だけどどうせ僕もそのうち彼女達と同じように。
飽きたら捨てられる身だ。
退屈しのぎに遊ばれてるだけだから…。
恋のレクチャーという先輩の暇潰し。
それが僕たちがこうして触れあう大義名分。いいのか?これで。
いいんだそれで。
だって僕は先輩の恋人じゃない。
単に僕は。気まぐれな先輩に、おもちゃみたいにして遊ばれてるだけ。
そんなの、ちゃんとわかってる…。
放課後。
「只野、外で見張っとけよ。」
カイ先輩が僕に言った。
マナミさんが来て二人で中に入り中から鍵をかける音がした。鍵は外からも開けられるけれど鍵を持って中に入ったから外からは開けられない。
開ける用も無いけどね。
二人が部室の中で何をしてるかなんてだいたい想像がつく。
いくら付き合ったことない僕だってその知識くらいはある。
小一時間。中から出て来た先輩は胸元の乱れを直しながら出て来たし、マナミ先輩も襟元やスカートのひだを気にしてた。
「ゴミ、片付けといて。」
僕にそう言って二人で出ていった後の部室に入ると春の若い新芽のような匂いがした。ゴミ箱から溢れたティッシュやちぎれたキラキラしたビニールのゴミを拾いまとめて校舎裏のごみ捨て場に持っていく。
僕はなにやってんだろ。
切なさが込み上げてくる。
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