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いつの間にか俺も…
「あー。退屈だな。了!ジュース買って来てよ。」
放課後、竹田があいつを使いっぱにしようとしてた。竹田が只野を了って呼んでたのがマジで気に入らなかった。
それに。使いっぱにしていいって誰が言った?好きにしていいのは俺だけなのに。
「俺が行ってくる。」
「え?」
竹田が目を丸くする。
「喉乾いたから俺もちょうど行こうと思ってた。欲しいの自分で選びたいし。竹田なんにする?」
「俺ペプシ。」
「わかった。了、行くぞ。」
あいつを連れて外に出た。初めてあいつを了って呼んだ。
「え?はい…」
淀んだ空気の部室は埃っぽくて好きじゃない。
途中で麗子とすれ違う。ついこの間まで俺が抱いてたやつ。
忘れてた。麗子の存在。
「あ、カイ。どこ行くの?」
「あ、ジュース買いに。」
「えー、あたしも行く。」
「来んなよ。」
「えー。行く!」
麗子がついてくる。
「じゃあさ、俺たち行くのやめるか。了、このまま逃げちゃう?」
横でこそっと了に耳打ちした。
予想通りビクッとなって反応するのを見たらなんか、興奮した。
「え?ペプシは?」
「麗子に託す。」
自販の前で三人で立つ。
ガコン、ガコン。
ペプシを麗子に渡した。
「え?」
「これ、竹田に渡しておいて?」
「え?」
「いいから。俺から頼まれたって言っといて。」
気がつくと了の手を引き、二人でそのまま部室に戻らず学校の中庭をブラブラした。
「ダリィな。今日は部活サボるか。」
中庭のベンチに背中を預けて手足を放り投げた。隣のベンチに了も腰かけた。
「なあ、了。練習の続き、しようか。」
「え?ここで?」
「嘘だよ。何ビビってんの。」
「いや、流石にここはみんなの目があるし…。」
「アホか。冗談だし。」
風が気持ちいい。なんかホッとするんだよな。こいつとこうしてるとさ。
なんだろ。この安心感。こいつが俺の事、好きだからかな…。
なんかマジで了とキスがしたい気分だった。
風が心地よくて自然と目を瞑る。
「あー、寝ちゃいそう。」
なんだかウトウトしてきた。
「あとで起こして?俺の事。」
頭のすぐそばに、隣に座るあいつの膝がある。手を延ばすと太ももの上にそのまま手を乗せてやった。
「なに黙ってんの?」
閉じていた目をゆっくり開け上目遣いで見上げると、すぐ目の前で俯くように見下ろしてるあいつの顔があった。
ズキッッ。
俺の心臓がすごい音をたてた。
血流が一気に逆流したかと思うほど激しく流れ出した。
バクバクして息苦しくなるほど。
何してんだ、俺。
「な、何見てんだよ。見惚れてたか?」
いつもは俺があいつをからかって反応を楽しんでたはずなのに。
なぜかこんなにもあたふたしてる俺の方がパニックだ。
「れ、練習、だよ。ウトウトしてる好きな人を見つめてキスしたいけど我慢してる練習…」
顔を真っ赤にして了がそんなことを言ってくるのを見てたら、確信、した。
俺、好きだ、了の事マジで…
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