私から産まれた鳥

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私、朝霧朋子、21歳。 短大卒の、特に取り柄も無い、入社1年目の事務職。彼氏いない歴2年。 人間の子供だって妊娠する可能性はゼロだ。 なのによりによって、なんで卵? もう一度鏡を見る。 うん、人間だ。間違っても鳥類ではない。嘴も無ければ、翼も無い。 試しに両腕をバタつかせてみても、飛べる感じは全くしない。 と、そう確認したら、何故か急に悲しくなった。 ”I wish I were a bird." (鳥だったら良かったのに) 今迄何度、心の中でそう呟いたことだろう。 私は飛びたい。私は逃げたい。 自由になりたい。全ての事から。 勿論鳥だって、野生の世界では弱肉強食。弱い者は真っ先に天敵に襲われて食われてしまう。 決して楽に生きてる訳じゃない。分かってる。よーく分かってる。 中学校の帰り道、ケガをして飛べなくなっていたムクドリを、拾って帰ったあの日から。 ううん。多分、もっと前から。 私はいわゆる『苛められっ子』だった。学校でも家でも。 ”鳥になって、広い世界で自由に生きたい。それが叶わないなら、せめて早く死んでしまいたい” そう思い乍ら、鳥になる事能わず、死ぬ事すら出来ずに未だに生きている。特に目標も何も無く。
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