私から産まれた鳥

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すっかりパニックに陥っている私に、その鳥は言った。 「思い出せない?」 そう言われて、しげしげとその鳥を見る。これは…ムクドリ…? 私はムクドリにまつわる、過去の私の過ちを思い、酷い罪悪感に駆られた。 「もしかして…あなたはあの時のムクドリなの…?」 私が中学校の帰り道で拾って帰ったムクドリは、うちの猫に食われてしまった。 家に着いて私が、炬燵に入っていた家族に、「今この部屋の中に、猫いる?」と訊いたら、「いないよ」とみんなは答えた。家族みんながそう答えた。 だから私は安心して、ムクドリを部屋の床に置いた。 すると、ムクドリが一瞬羽ばたいた羽音を聞いて、炬燵の中から猫が凄い勢いで飛び出して来て、アッと思った瞬間にはムクドリを咥えて外へと逃げて行ってしまった。 まさか、炬燵の中にいるなんて。「いない」と言った家族全員、炬燵に入っていたというのに。 ”これじゃまるで、猫の餌にする為に拾って来たようなものだ” 私は自分を責めた。家族の言う事を、迂闊に信用してしまった自分を。 それ以来私は、鳥を飼いたいという気持ちを封印してきた。 自分にそんな資格は無いのだと。 ずっと… 「ずっと君が自責の念に囚われて苦しんできた事、知ってるよ…。だから僕は、もう一度産まれてきたんだ。こうして、君の中から…」
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