わがまま王女の婚約破棄(3)

1/1
前へ
/14ページ
次へ

わがまま王女の婚約破棄(3)

 ローデール王国を守る将軍の娘であるジリアンは、第1王女アネットと同じ年に生まれ、同じ髪、同じ目の色をしていた。  背格好もよく似ていたジリアンは、幼い頃は王女の遊び相手、そして学友に、成長してからは騎士となるべく訓練を重ね、王女の護衛騎士に、さらには影武者となり、王女に仕えてきた。  公爵家の令息であるウィリアム・ディーンもまた、アネットの学友に選ばれた1人で、アネット、ジリアン、ウィリアムの3人は幼なじみとして多くの時間を過ごしてきた仲だったのだ。  今でも、3人で会えば、アネット、ジル、ウィル、とお互いに呼び合うくらい、気の置けない関係だと思っていたのに。  ジリアンは黙ってウィリアムに腕を引かれて、王宮の回廊を歩きながら考えていた。  そして思い出す。  学友仲間には、もう1人、隣国から留学していたジークフリートもいた。  ジークフリートは、隣国の第2王子だったが、アネットとウィリアムの婚約後、突然、母国へ帰国してしまったのだった。  * * *  ぱたん、と閉まった扉の向こうに、ウィリアムとジリアンの姿が消えた。  2人の姿を見送ったアネットは心の中でそっとつぶやく。 (ひどいと思うなら、ウィリアムを幸せにしてあげて) (わたくしは、もう少しの間、『わがまま王女』らしくいなければいけない)
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加