はじまり

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「ルウナ・ランバート!本日限りで君とは婚約破棄する!!もう耐えられん!!お前の様な大人しい女など王妃(私の隣)に相応しくない!!」 華麗な装い センスのいい料理やスイーツ 煌びやかなシャンデリア 手には喉をスカッとさせてくれるシャンパンのグラス 皆各々に5年間の最期の日である卒業パーティを楽しんでいる最中、バカ(婚約者)によるバカ(婚約破棄)な発言が200名は入る大広間で響いた。 皆、その声にどよめきながらも バカに視線を一気におくる。 バカの横には勝利を確信しただろう嫌味たらしい笑顔でこちらを見下ろす男爵令嬢のスフィア・ローレン嬢の姿がある。 異世界転生の悪役令嬢もの ヒロイン憑依もの 様々な作品を読破した私はある日、これまたテンプレの如く、交通事故にあい26歳という若さでこの世を去ってしまった。 まだまた読みたかったアンソロジーももう読めなくなってしまうのか……私の心残りが相当なものだったらしい。 生まれ変わる際、シルバーとブロンドヘアーが混ざりあった女神様が目の前に現れ私にこう言ったのだ。 「あなたにこの世界を救って欲しいの。知識もありそうだし、あなたの夢も叶えられる。だから異世界に転生してどうか元の姿に戻してほしいの。」 「……特典として何がもらえますか?」 「え、ええ……とと、特典……? ……な、何がいいかしら……?」 「……ではまず見た目から……見た目は貴方様のお顔に髪色はシルバー……それから魔法とかありますか?もしあれば……」 少しやり過ぎかなと思ったけど意外とあれこれ要望も通り、最後に女神様がこう言った。 「今世では幸せにね」 まさにテンプレそのもの。 しかしそれは直ぐに女神様からのエールだと思い心にそっと刻んだ。 前世の私はテンプレだから多くは語らないけれど、それはそれは大変な人生だった。 親は居たけど、どこに居るのかもわからず 婆ちゃんに預けられたはいいがその婆ちゃんも鬼婆でしょっちゅう折檻され 服も誰かのお古にランドセルもボロボロのお古 そんな子が腐らずまともに育っただけでもすごいと思ってほしい。 そんなことを思いながら キラキラしている世界に入り込む…… そして目が覚めると、ランバート公爵家のルウナ・ランバートとして、そしてこの帝国で唯一の公爵令嬢として生まれ変わっていた。 私を産んだお母様は生まれたわが子の姿を見てとてもとても喜んでくださった。 誰にも似ていないシルバーの髪、生まれた直後だというのに見目麗しく、そして女神様の美しい声ががランバート家に響いたという。 「この子は違う世界から来た娘です。前の世界ではそれはそれは可哀想な目に遭ってしまい26歳という若さで亡くなってしまいました。アリアドネ・ランバート(母)、ロイド・ランバート(父)、ユリウス・ランバート(兄)この子をどうか頼みますよ」 その声が止むと、母の部屋の前で待機をしていた父と兄が喜びとともに部屋に飛び込んできたそうだ。 産婆でもある侍女長のクロガネにいきなり入ってきたので叱られてしまったけれど、それはそれは喜んでくれていたとお母様は教えてくれた。 そんな私はというと、それはそれは過保護も過保護に育てられ、蝶よ花よと甘やかされ ……でも、マナーや勉強の時はそれなりに厳しかったけれどそれでも諦めず最後まできちんと教えてもらい、兄、ユリウスの友達であるクロードとレイと泥んこになりながら それはそれは毎日楽しく暮らしていたんだけれど……
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