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「黒いワンピース似合うね、可愛い。ロリ服っていうの? 黒が好き?」
「黒は嫌い。死んだ人の色だから」
嫌なタイミングで一番触れられたくない色について聞かれると、答えは自然とぶっきらぼうになる。
けれど彩生さんは気にする様子もなくうんうんと頷いた。
「だからあの絵には黒が無いんだ。もしかしたらなんだけどさ……虹花ちゃんには実際に世界があんなふうに見えてるんじゃない?」
息が胸に詰まった。
喉の奥が塞がって、頭からすーっと血の気が引く。
「なんで……」
同じ様に視える人なら気付くんじゃないかと思っていたけれど、いきなり言われると驚きと混乱が噴き出す。
私の感情が視界を黒く染めた。
その靄の向こうから彩生さんの声がする。
「絵の技法とかわからないって言ってたけど、画面の水玉の色の配置がね。デザインされた配置じゃないならすごくバランスが良すぎるんだ。あんなに多くの色があるのに、まるで自然にあるものみたいにしっくり来る。天性でセンスが良いのかと思ってたんだけど、なんとなくそう見えるんじゃないかって思って。さっきから虹花ちゃん、何もないはずの辺りを目で追いかけてたからさ」
彩生さんにも見えてるわけじゃないとわかると、感情の昂りが少し落ち着いて、私の黒い靄が減った。
彼女の周りの色は相変わらず好意的で、綺麗な色をしている。
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