フライトコール

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 *  少女の歩くスピードはとても速かった。それなのに、その左の(こぶし)に乗った鷹は、まるで木の枝に止まっているように、ほぼ揺れることもない。  灰黒色(はいこくしょく)の翼は水をはじいて、もうすっかり乾いたように見え、祐介は、いまだにぐっしょり濡れネズミの自分が、みすぼらしく感じた。  ――いいな、お前は。  心の中で愚痴を言ってみるが、安息の場所に帰れた鷹が少しばかり羨ましく思えただけで、この鷹を助けたことに、まったく後悔はない。  ただひとつ言えば、この妙な沈黙がすこしばかり辛かった。  彼女はおしゃべりなタイプではないらしい。  少女の横に並んで歩きながら、祐介は自分から話しかけてみることにした。 「よく懐いてるね、その鷹。さっきその鷹が足環(あしわ)してるのが見えたから、野生じゃないんだろうな、ってのは思ったけど……」 「はい」  少女は真っ直ぐ前を見たまま答えた。 「腰にもなんかついてるよね。鈴?」 「はい。見失わないように」  またもや素っ気なかったが、これが彼女の普段の口調なのだと、何となくわかって来た。
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