5人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「いや、実はさ、さっき究極に腹減ってて、何年か前に食べた激ウマの鴨鍋思い出してさ」
とりあえずまた、話題を変えてみた。
「そしたら目の前に、朱色っていうか、赤茶色っていうか、そんな色の首のカモがぷかぷか浮かんでて、旨そうだな、なんてバカみたいなこと思っちゃって」
「ヒドリガモです」
「あ、そんな名前なんだ。……で、そんなことぼんやり思ってたら、この銀ちゃんが颯爽と別の小さいカモ追っかけて来て、俺の目の前でバシッと捕まえて、めちゃくちゃ痺れたんだよ。カッケ―って」
「ミスでした」
「……え?」
「あの場所で飛ばすべきじゃなかった」
「あ……でも、テグスのせいであって、それさえなけりゃ、見事なハンティングだったはずでしょ」
「私のミスなんです」
少女は静かに、けれどきっぱり言い切った。
理解できなかったが、彼女がそう言うなら、そうなのだろう。
祐介はそれ以上続けるのをやめた。
最初のコメントを投稿しよう!