フライトコール

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  * 「この人が銀を助けてくれたの。巻き付いたテグスを外してくれて……。銀が怪我をさせてしまったから手当してあげないと。服も濡らしちゃったから、着替えを貸してあげたいし」  玄関の前で緋央が淡々と説明する間、その人は「あらまあ」といちいち驚きつつ、緋央と銀と祐介を交互に眺める。  祐介も、何か説明しなければと口を開きかけたとき。彼女は緋央のぐっと握りしめた右手に視線を落とし、小さく息を漏らした。 「ああ……。そっか。わかった。緋央はすぐに銀を部屋に入れてあげて。あとは私がちゃんとやっておくから」  小さな子のように頷くと、緋央は銀を左手に乗せたまま、玄関の中へ入って行った。 「あの、すみません、こんなところまで付いて来て。俺、友井祐介と言います。あの、たまたま川の傍で――」 「緋央は狩りの途中で、なにかミスをやらかしたのね」 「え」  驚いた表情の祐介に、彼女はにっこりと笑いかけ、すぐに「私は緋央の祖母の、白崎栄(しろさき さかえ)といいます」と、自己紹介してくれた。  小柄な田舎のおばあちゃんと言った感じだが、緋央にどことなく似た涼し気な目と、丁寧な話し方のせいで、独特の品を感じる。
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