フライトコール

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 *  すっかりきれいに洗濯されたジーンズに履き替え、祐介は緋央と並んで昨日通った道を、川の方に向かって歩く。  革のグローブを()めた緋央の左手の上で、銀はほぼ揺れることなく、安定して前を向いている。  ブルーグレイの背中も金色の鋭い目も、見れば見るほど綺麗な鳥だと、祐介は思った。 「俺の手にも乗ってくれるのかな、銀は」  銀の顔を覗き込みながら祐介が言うと、緋央はきっぱり「今は無理です」と答えた。 「今は?」 「狩りの前だから。訓練を受けていない人の手に乗ると、体力を消耗してしまうんです」 「手に乗せるのにも、訓練が必要なの?」 「拳に鷹を止まらせることを『()える』と言います。完全に止まり木のように安定させられるまで、三年はかかります。私は小学四年生から練習を始めました」 「げ、そんなに難しいの? それって正信さん独自の訓練法?」 「諏訪流(すわりゅう)です。私の師匠はお爺ちゃんだけど、お爺ちゃんは厳格に諏訪流を継ぐ鷹匠でした」 「鷹匠にも流派があるんだ。すごいな。それって、厳しい戒律とか、狩りの極意とか伝承するの? ……って、ごめん。軽々しく教えてもらえるもんじゃないよね」  緋央の返事は無かった。  民家と田んぼの間の、細い農道をしばらく二人で黙って歩く。  最初ほど、この沈黙が気にならなくなっていた。緋央の言葉は、気長に待てばいい。
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