フライトコール

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 *  やるべきことが急に増えたため、その日はカモ一羽で猟を終了し、まっすぐ家に帰った。  まずは栄に今日の収穫を渡し、カモの中から出て来たものを報告した。  栄は驚きはしたが、あまり深刻には捉えていない様子だ。「持ち主を探すって? 面白いことを考えるものね」と笑う。  変わったオモチャを拾って喜ぶ子供を見守るような目だったが、そんなおおらかさも、祐介は嫌いではなかった。緋央ももしかしたら、栄のこういう部分に、救われているのかもしれないと、何となく思った。  軽く昼食を取り、その後は栄の畑仕事の手伝いだ。早く取り掛かりたくて、逆に栄を急かし、大いに笑われる。  緋央は午後から自室で勉強だ。来月、いくつかの学校の入試試験を受けるのだという。  緋央自身は、高校を卒業したら、バイトをしながら鷹匠の仕事を本格的に始めたいと言ったが、栄は強く反対したらしい。短大でもいいし、専門学校でもいい。とにかく学校と名の付く場所に通い、それを足掛かりにちゃんと就職してほしいと。  祐介は、ほんの短い二人の会話から、まだその辺の折り合いがちゃんとついていないのを感じ取ったが、口を挟むことはしなかった。  そもそも、自分は人生絶賛転落中(じんせいぜっさんてんらくちゅう)の身であり、挟めるとも思っていなかった。 「緋央ちゃんの勉強と、俺の作業がひと段落したら、夕方からいっしょに、例の聞き込みに行こうな」  そう言ってやると、緋央はしぶしぶと言った表情で、自分の部屋にこもった。  ああいうちょっとむくれた表情は、やっぱり高校生の女の子だな。  無意識にニンマリしてしまう自分の頬を軽くパンと叩いた後、祐介は栄の農作業を手伝うために、納屋へ向かった。
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