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やるべきことが急に増えたため、その日はカモ一羽で猟を終了し、まっすぐ家に帰った。
まずは栄に今日の収穫を渡し、カモの中から出て来たものを報告した。
栄は驚きはしたが、あまり深刻には捉えていない様子だ。「持ち主を探すって? 面白いことを考えるものね」と笑う。
変わったオモチャを拾って喜ぶ子供を見守るような目だったが、そんなおおらかさも、祐介は嫌いではなかった。緋央ももしかしたら、栄のこういう部分に、救われているのかもしれないと、何となく思った。
軽く昼食を取り、その後は栄の畑仕事の手伝いだ。早く取り掛かりたくて、逆に栄を急かし、大いに笑われる。
緋央は午後から自室で勉強だ。来月、いくつかの学校の入試試験を受けるのだという。
緋央自身は、高校を卒業したら、バイトをしながら鷹匠の仕事を本格的に始めたいと言ったが、栄は強く反対したらしい。短大でもいいし、専門学校でもいい。とにかく学校と名の付く場所に通い、それを足掛かりにちゃんと就職してほしいと。
祐介は、ほんの短い二人の会話から、まだその辺の折り合いがちゃんとついていないのを感じ取ったが、口を挟むことはしなかった。
そもそも、自分は人生絶賛転落中の身であり、挟めるとも思っていなかった。
「緋央ちゃんの勉強と、俺の作業がひと段落したら、夕方からいっしょに、例の聞き込みに行こうな」
そう言ってやると、緋央はしぶしぶと言った表情で、自分の部屋にこもった。
ああいうちょっとむくれた表情は、やっぱり高校生の女の子だな。
無意識にニンマリしてしまう自分の頬を軽くパンと叩いた後、祐介は栄の農作業を手伝うために、納屋へ向かった。
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