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「その浅野さんって、たしかお爺ちゃんの同級生だった人です」
「マジで?」祐介は声を上ずらせた。「なんで今までその話しが出て来なかったんだろう」
「SOSのイメージと、養豚場が繋がらなかったからだと思うんです……。おばあちゃんも、私も」
「あ、ごめん、責めてるわけじゃないから。俺も養豚場は浮かんで来なかったし」
慌ててフォローする。
養豚場か――。
改めて想像してみた。施設内に隔離できる小屋があったとしても、監禁場所としては、少々人の出入りがありすぎる気がした。
「まあ、今のところ、そこ以外にブタ小屋に相当する小屋の見当がつかないし、とりあえず、その養豚場を探ってみるしかないとは思うんだけど……」
「祐介さんは、その養豚場を調べるのが嫌なんですか?」
図星を突かれる。
「ここまで大掛かりな調査になると思ってなくて。……正直ちょっとビビってる」
「閉じ込められている子がいるとしたら、監禁場所が大きな養豚場か、小さな小屋かどうかは、関係ないと思うんです。その小屋の持ち主がだれかも、関係ないし」
真っ直ぐな視線が祐介を射抜く。これは、間違いなく責められている。ジワリと汗が滲む。
緋央の言葉は全くその通りで、弁解の余地もなかった。
「緋央ちゃん、ごめん。俺が悪かった。せっかく方向性が見えて来たのに……。とりあえず家に戻ろう。栄さんにも色々アドバイス聞いて、その上でどうするか決めよう」
けれど緋央は口をキュッと結ぶ。視線は遠く、山の稜線を見つめていた。どこか様子がおかしい。
「緋央ちゃん?」
「暗い部屋に閉じ込められたら、とても怖いんです。誰かに助けてって言おうとしても、誰にも届かなかったら。……すごく怖いんです」
緋央は、かみしめるように言った。
「助けてあげないと……」
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