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「緋央ちゃん……」
「いいです。ここからは、私ひとりで探してみます。あのメッセージを受け取ったのは私だし、探そうって言い始めたのも私だから。祐介さんは、零士さんだけを探してください。そのためにここにいるんだから」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「祐介さんが、半信半疑なのも分かっています。あのメッセージは、誰かのイタズラかもしれないって。私も、そうだったらいいと思ってます。そんな悲しい子がいなければ、それでいいんです。でももし本当にいたら、すごく辛いから。だから、出来る限り探してあげたいんです」
「もしかして、閉じ込められて、怖かった想いをしたことがあるの?」
祐介が勘で言った言葉は、あながち外れてはいなかったようだった。
緋央は何も答えなかったが、右手が強く、握り締められていた。
いつの間にか空は薄暗くなり、さらに冷え込んで来た。ポツリポツリと街灯がつき始める。
祐介は大きく息を吸い込んだ。
腹式呼吸で、腹から声を出して見る。
「これは僕たち二人の案件だよ。どちらかが抜けるなんて有り得ない。もう一度、振り出しに戻ろう」
――少しは探偵っぽい声色と、雰囲気になっていただろうか。
よれよれのTシャツとジーンズでは、決まらなかったろうか。
緋央は妙な表情で祐介をじっと見つめたが、察してくれたのか、やがてやんわり笑ってくれた。
切れそうな糸が再び繋がった気がして、祐介は心の底からほっとした。
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