フライトコール

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「それからの、緋央ちゃんは……?」 「私たちには普通にしゃべってくれるけど、小学校に上がっても、あまり他人と打ち解けることをしなかったの。すごく臆病で、他人の事が、怖かったみたいね」  友達もできず、放課後も家にこもりがちの緋央を見かねて、正信は鷹匠の技術を教え込むようになったという。  緋央はとても呑み込みが良く、すぐに吸収して行った。  正信は、鷹匠が集まる大会などにも必ず緋央を連れて行き、緋央が自分の技術に自信が持てるよう、きっかけを与え続けたらしい。亡くなる前の年まで。  緋央が正信に抱く尊敬の念は、鷹匠の技術だけでなく、そういう思慮深さにもあるんだろうと、祐介は思った。  緋央が、二人の孫で良かった。  しんみりしてしまった栄にそう伝えようと思ったその時、車は左折し、広い砂利道に入った。  栄は正面に見えて来た建物を指さす。 「ほら。あそこよ」
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