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くちばしを押さえると鋭い爪で蹴り上げて来るのでなかなか作業が進まない。
両足には革製の足環と、それに繋がった十五センチほどの革ひもが付いていて、それを膝で踏むことでようやく動きを制御できた。
手間取りながらも絡まったテグスの最後の一筋を翼からなんとか取り除いてやると、羽根を少し広げて伏せるようにし、その場にうずくまった。
飛ぶ気力もないのだろう。喘ぐように口を開け、何度も瞬きしながら、周囲を伺っている。
「えらい目に遭ったな。お前、飛べるか?」
鷹は金色の目を見開いて一瞬祐介を見たが、またすぐに逸らした。飼い鳥らしいが、人懐っこさは微塵も感じられない。
「お前どっから来たんだ? 飛べなきゃ家にも帰れないよな。どうする」
具合を確かめようと、祐介がもう一度鷹に手を伸ばしかけた時だった。
「銀!」
すぐ後ろから声がした。
咄嗟に土手の上を振り向くと、立っていたのは高校生くらいの細身の少女だった。
祐介が口を開く間もなく、少女は土手から飛び降り、鷹のすぐ傍に着地した。
ポニーテールにした長い髪が、しなやかに揺れる。
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