フライトコール

8/63

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
(ぎん)」  不安げにもう一度少女が言うと、羽根を垂らしたままだった鷹は勢いをつけ、少女が差し出した左手にぴょんと飛び乗った。  頑丈そうな分厚い手袋の上で、鷹はリラックスしたように羽根を繕い始めた。少女から安堵の息が漏れる。 「え……と。君の鷹?」  少女から切り出してくれなかったので、祐介はそっと訊いてみた。 「助けてくださったんですね」  少女は鷹を左手に乗せたままゆっくり立ち上がり、「ありがとうございます」と、そのまま深々と頭を下げる。  祐介は慌てて、自分も立ち上がった。 「いや、たまたま通りかかったし、そんな、……当然だし」 「当然じゃないです。川に飛びこんでまで鷹を助けてくれる人なんて、普通いません」  きっぱり言って体を起こす。  意思の強そうな目が真っ直ぐ祐介を見つめてきて、感謝されているはずなのに、妙に委縮してしまう。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加