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「銀」
不安げにもう一度少女が言うと、羽根を垂らしたままだった鷹は勢いをつけ、少女が差し出した左手にぴょんと飛び乗った。
頑丈そうな分厚い手袋の上で、鷹はリラックスしたように羽根を繕い始めた。少女から安堵の息が漏れる。
「え……と。君の鷹?」
少女から切り出してくれなかったので、祐介はそっと訊いてみた。
「助けてくださったんですね」
少女は鷹を左手に乗せたままゆっくり立ち上がり、「ありがとうございます」と、そのまま深々と頭を下げる。
祐介は慌てて、自分も立ち上がった。
「いや、たまたま通りかかったし、そんな、……当然だし」
「当然じゃないです。川に飛びこんでまで鷹を助けてくれる人なんて、普通いません」
きっぱり言って体を起こす。
意思の強そうな目が真っ直ぐ祐介を見つめてきて、感謝されているはずなのに、妙に委縮してしまう。
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