5人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「だって、テグスが巻き付いてたんだよ。この川で釣りをしてそのまま片付けもしないで帰った酷い奴がいるんだよ。そう言うのめちゃくちゃ腹立つし、そんなんで死んじゃったら鷹が可哀想すぎるじゃん」
少女が目を見開いて無言で祐介を見つめて来た。
なにか妙な事を言ってしまったのかと考えてみたが、思い当たらない。
「あ……これ。このテグスだよ」
祐介は鷹から外したテグスをもう一度拾い上げ、少女に見せた。
「長いのが何本かあるし、ほら、ウキも付いてるだろ?」
「血が」
少女は持ち上げた祐介の手を見つめて、低く言った。
「え」
祐介の手の甲や手首には鷹の鋭い爪やくちばしに引っかかれた傷が無数にあって、血が滲んでいる。テグスの除去に必死で気づかなかった。
カッコ悪いものを見られた様な気になって、とっさに祐介は手を隠す。
最初のコメントを投稿しよう!