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【一】
たぶん二月なんて、一年で一番寒くて、生き物には平等につらい時期なんだ……。
見知らぬ片田舎の河川敷を歩きながら、そんなことを思っては見たが、やはり何の慰めにもならなかった。
何度見返しても、自分の古ぼけた財布の中身は千二百六十円に変わりなかったし、それが全財産だと言う事にも変わりなかった。
「あぁ、マジかよ」
友井祐介は、晴れ渡る冷たい空に、思わず小さく嘆いた。
この町に向かうバスの中では、それでもわずかに希望はあったのだ。
半年前に金を貸した友人に会い、いくらかでも返してもらえれば、まだ何とかなると。
とりあえず住む場所を決め、止められている携帯代を払い、街金からの借金の、利息分だけでも払えれば――。
けれど、その最後の望みも潰えてしまった。なけなしの金で電車とバスを乗り継ぎ、この田舎町まで足を運んだのに、無駄骨に終わってしまった。
万事休す。絶望感で、ため息も出ない。
こんな状況に至るまでの過程を反芻する気力もなかった。運が悪かったと言って片付けてしまえばそれまでだが、結局その不運も、自分の至らなさが招いたことなのだと、祐介は自覚していた。
負け組、落伍者、ダメ人間。
頬に当たる風にまでそんなことを囁かれているような気がする。
――ああ、腹が減った。

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