第一章 出会い

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 日々は、飛ぶように過ぎてゆく。  剣道部に入部した私だが、それと同時にクラスの学級委員も務めることになってしまった。  女子の学級委員は誰も出そうになかったから、私が手を挙げたんだよね。一応小学校では、児童会もやっていたし……じゃんけんで決まって、嫌な思いをしながら委員をやる子が出てくるより、よっぽどいいと思ったんだ。  だから、出会いも増えた。  まず、剣道部。今年の女子剣道部入部者は三人。二組の船井(ふない)みつるちゃんと、同じクラスの町田麻由(まちだ まゆ)ちゃん、そして私。  この二人とは、部活が始まってからすぐに仲良くなった。お互い剣道初心者同士。稽古をする先輩のカッコよさにあこがれて、入部したそう。私たちも、いつかあんな風になれるのかな……と夢見て、最近は筋トレをこなす毎日。  学級委員会での出会いも多かった。もうすでに、二回の学級委員会が開かれていて、忙しく活動している。自己紹介が第一回の時にあって、そのときにたくさんの友達ができたって感じかな。  あ、そうそう、なんと、剣道部で一緒の船井さんが、二組の学級委員をやっていたんだよね。部活でも委員会でも同じ友達ができて、なんか心強かったな。  それと……、同じ一組の、もう一人の学級委員。名前は西原虎宇(にしはら こう)。短く刈り上げた髪に、さわやかな笑顔が似合う、サッカー部男子。つまり、隣の席の市川君と同じ部活ってこと。私はまだ、あまり仲良くなれていない……かな。  春は、出会いの季節だ。そう思いながら、たくさんの仲間とともに忙しく過ごしていた私だけど……。  やっぱり、今思えば、「あの再会」が一番私を翻弄させた出会いだった。  それは、この物語の原点ともいえる、六月の出来事――。 「ねえ、河海」  私に声を掛けてきたのは、沢波甲斐(さわなみ かい)。この前実施された定期テストで、ぶっちぎりの学年一位を記録した、秀才のクラスメイトである。一応、小学校は同じだった。だけど、仲の良さは「必要な時に話す程度」。そんな沢波が、どうして今頃私に……? 「なに?」 「生徒会本部役員選挙、出るの?」  学年一の秀才男子から発せられた言葉に、黙り込む私。  知っての通り、私は今学級委員をやっている。で、それが楽しいのよね。生徒会本部は、小学校からのあこがれでもあるけど、学級委員を続けたい思いも強い。次の係や委員会の交代は十月、後期が始まるときなんだけど……。そのときに、どちらをやろうか迷っているんだ。二つともはできないのが、ここ日向中のルールだからね。 「まだ決めてないんだ……どうしよう、と思って」 「ふうん。そうなの」 「え、何その反応」 「いや別に……」 「沢波こそ、出ようとか思ってるの?選挙に」 私が聞くと、沢波は目を細めて首を傾げた。 「どうだろうね。ま、ありがと」 そう言って、片手をあげて去っていく沢波甲斐。 ……結局、何がしたかったんだろう?私の考えの、チェック? よくわからなかったけど、そのときは特に気にならなかった。
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