ZERO

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真木のとなりに可愛らしい女の子を想像してみる。それは確かに意外とすぐに連想ができた。 事務の女の子や、受付の女の子には確かに笑顔を向けているのを何度も見たことがある。 結局、私だけ嫌われていて、ああいう態度になっているのだ。 そんなことに気づかなくてもよかった気がする。ただでさえ、彼氏に女としての自信を木っ端微塵にされ続けているのに。 なんとなく憂鬱なまま、仕事をすすめてていたが、集中が足りなかったのかもしれない。 思った以上に仕事が残っていて、誰かに少し頼もうとして周りを見渡す。 「あっ、幸田さん」 二つ年下のスタッフを見つけて声をかけると、なにやら急いでいる気がして私は首をかしげる。 「あっ、何か急ぎありました? 子供が熱出したみたいで……」 そこでハッとする。彼女は結婚をして、まだ小さい子供がいる。 そして周りを見渡しても、残れるようなメンバーはいない。 「うんん、大丈夫。お子さん大したことないといいね」 「はい、ありがとうございます」 ペコリと頭を下げて帰っていく彼女に張り付けた笑顔を向けて見送った後、私は机に顔を埋めた。
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