ZERO

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その時、首筋に冷たいものが当てられて、「ひゃ!」と声が出てしまう。 「なに、その声」 その声と笑い方に聞き覚えがありすぎて、私は勢いよく振り返った。 「真木! ちょっとなにするの? 冷たいじゃない」 またもや文句を言いに来たのかと、臨戦態勢で臨んだ私だったが、何も言い返してこない真木を見上げた。 「ほら。これ飲め。顔色悪いぞ」 え? 渡されたのは私の好きな甘いミルクティー。拍子抜けというのはこのことかもしれない。 目の前に出されたそれを、「ありがとう」と恐る恐る受け取る。 ペットボトルの蓋を開けようとしたが、ずっとパソコンを打っていたせいか、力が入らずになかなか開かない。 そんな私を見て何も言わずもう一度ペットボトルを私の手から取ると、少しだけ緩めて戻してくれた。
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