ZERO

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「真木どうしたの? 何か企んでる?」 「いいから飲めよ」 ため息交じりに言われて、私は開けてもらった蓋を開けて、一口飲むと甘さが体中に染み渡る。 「お前、今日も昼まともに食べてないだろ? 早く帰れよ」 確かに、クライアントの打ち合わせが立て込んでいて、今日の昼はほとんど食べていない。 「でも、まだ仕事があるの。そんなこと言っても」 「仕事も大切だし、お前が努力をしていることも知ってるけど、身体が資本だぞ。手伝うから貸せ。俺ができるところあるだろ……」 そう言うと、私から資料を取り上げて、隣の席に自分のPCを広げた。 まさか真木からそんなことを言われると思っていなかった私は、なぜか泣きたくなる。 普段冷たい癖に、こんな時だけ優しくするなんてずるい。 「ごめん、ありがとう」 素直に謝った私に、かなり面食らった表情を真木はすると、ポンと私の頭を叩く。 「お前こそどうした?」 そう言って笑った真木に、私も自然と笑みがこぼれた。
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