521人が本棚に入れています
本棚に追加
エレベーターで1Fに降りて、真木を探すが見当たらない。
私のほうが早かったかと、小さく息を吐いてエントランスにある椅子に座ろうと思った時だった。
「おい」
声をかけられた人を見て、驚いて一歩後ろに下がる。それほど驚いたのだ。
「だれ?」
「は? お前ふざけるなよ」
苛立った様子で言った声は、紛れもなく真木のものだったが、目の前に立っていた人は別人だ。
「だって、眼鏡ないし、髪だってボサボサじゃない」
「お前な。俺だって外に出るときはあのままなわけないだろ? それに今までだって見てただろ。お前どれだけ俺に興味がないんだよ」
少し不機嫌そうな真木だが、今は目の前の人が気になって仕方がない。
今更ながら優希ちゃんの言葉に納得してしまう。高い身長に、恐ろしく整ったパーツ。眼鏡を外した瞳は少し茶色ぽくも見えた。
確かに、飲み会の時などで見ていたのかもしれないが、興味がなかったのか……。
ポカンとしていたようで、立ち尽くして見上げる私に、少し困ったような表情を真木は浮かべると、行くぞそう言って歩き出した。
「ちょっと、待って!」
慌てて追いかけて彼の横に並ぶと、ビルの外に出た。
最初のコメントを投稿しよう!