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「真木はよく来るの?」
女将さんも真木の名前を知っていたし、彼の雰囲気も柔らかい。
「ああ、仕事の合間に」
「エンジニアさんたち本当に忙しいもんね」
「誰かさんたちのせいでな」
私たち営業が無理難題をお願いしているから、忙しいのはよく理解している。
黙り込んだ私に、真木が苦笑しつつ口を開く。
「おい、やめろよ。それがお前の仕事だろ。いまさらブレるなよ」
そのきっぱりとした言い方に、なんとなくホッとして小さく頷いた。
「腹減りすぎて弱ってるんだな。ほら好きなの頼めよ。おすすめは出し巻きがうまいぞ」
結局、真木のオススメを頼んでもらい、それを口にするとお腹が空いていたことにようやく気付いた。
「おいしい」
心から零れ落ちたその単語に、真木も「よかったな」となぜか安堵した表情を浮かべた。
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