ZERO

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一緒に住み始めたころは、二十八になる前にはとっくに自分もその仲間になっていると思っていた。 しかし、現実は……。 「あっつい」 マンションから外に出ると、ついその言葉が漏れる。まだ八時前というのに、太陽がジリジリとアスファルトを照りつけ、マンションから駅に向かうだけでも汗が滲む。 別に今すぐ結婚をしたいわけでもないし、仕事も楽しい。ITデザインの会社に就職して六年目、営業という仕事はやりがいもあるし、責任ある仕事も任せられるようになり、後輩もたくさんできた。 だから、このまま冷めた彼氏との現状を見て見ぬふりをして、この関係を継続すれば結婚という未来の可能性はまだあるはずだ。 お互い自由にしながらも、とりあえず配偶者を得られる。 実家は田舎で母からはしつこいほどの結婚の催促があり、まだと答えれば、そんな人とは別れて見合いをしろ。 最近の母からの電話は、野菜を送った、もしくはその話以外にないため、電話に出るのも億劫になっている。 それも終わるのだ。
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