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「それより、資料できてる?」
ごまかすようにそう聞くと、優希ちゃんは「できてますけど……」とまだ言い足りないのか不満顔だ。
「おい」
そこに低い声がして、私は声の方へと顔を向けた。
「真木か。なに?」
現れたのは、私の同期でありエンジニアの真木廉也。才能の塊と言われ、賞などもこの若さで取っている我社の稼ぎ頭だ。百八十㎝はあり、均整のとれたバランスの良い体形をしているが、仕事に神経を全部使っているのか、眼鏡にボサボサの髪、足元はワンコインショップのサンダルだ。
「S社のこれ、なんだよ。納期を予定より二週間も早めるとか無理に決まってるだろ?」
バサっと企画書を私のデスクに置くと、真木は冷たい視線を向けた。
「そんなことわかってるから、頼んでるんでしょう?」
「は? いつお前に頼まれたよ」
「だから、今よ!」
私も負けじと言い返す。
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