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縁の笑顔へ、表情が緩んだ紫電。しかし、白雪等の手前気恥ずかしさに咳払いと共に。
「有り難う御座います――」
静かに言葉を返すに止めた。しかし、其の姿だけで白雪には多くを察するに十分であった様子。僅かに口元を緩め、其の空間を満足気に眺めるのだった。
他愛無い会話を楽しむ食事を満喫し、其々へ別れる。白雪と飛龍は、本日書庫へ。飛龍へは、兵法以外にも多くの学習が必要だと。紫電は、通常通りの勤務。縁は、紫電の見送りへと。
「――では、行って参ります」
「行ってらっしゃいませ」
紫電は、縁の笑顔の見送りへ微笑み頭を下げると馬車へと足を向ける。が。
「あっ、紫電」
呼び止める声へ、振り返った紫電。
「はい?」
「本日は、直ぐに治安維持の部隊施設へ向かうのか?」
「いえ。本日は、先に刑事隊の施設へ向かった後になります」
刑事隊とは、東に於いて軍とは若干位置の異なる部隊。主に民間で起こった事案を担当し、民等と近い距離感にて治安を守る部隊だ。其の仕事は幅広く、民間で起きた事件や事故の捜査、軽犯罪から罪人の捕縛、収監、災害の支援部隊結成等々。此の刑事隊の行った捜査から重大な犯罪に繋がる場合、軍へ報告が為される。事と次第に依っては、治安維持部隊の出動命令も。此方も、紫電が最高責任者を担うのだ。
基。縁も、紫電の立場と其の職務の把握は既にして居る。ので、其の状況を即理解し。
「先に刑事隊か……成る程、御忙しい事だ。本日も、御体に気を付けて」
何やら含みある言葉が気に掛かるも、気遣いへは素直に笑みを浮かべて。
「有り難う御座います――では」
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