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強くそう訴える縁。そもそも、此れは初っ端紫電へ交渉した職務の依頼だった。此の東に於いて、国防を担う紫電。東の精神其のものを司る様な将軍の夫が、西の者となったのだ。此処には流石の縁も、婚約が決定された頃より重責を感じて居た。聞かされた皇家貴族と、治安維持部隊員達の確執も加わって。更に東西の教えとは、背を合わせる程に教えが真逆。生まれから異なる縁は、東の民以上に東の精神を学ぶ必要がある。書面で理解するのは容易いだろうが、其れでは知った気になれるだけだ。そんなものでは、東の防人達より認められない。東へ生まれ此処へ集う皆が元より持って居る、其の精神を身に着けねばならないと。
そんな縁の強い眼差しからは、三人へ容易く否を示す事を躊躇わせる。しかし、縁に下っ端の雑用等させられないの当然。此れ以上、西へ無礼を重ねる事は出来ないのだ。其れは、紫電の側近達も心得る処で。
「奥方様。武器の扱いは、多くの知識も要しますので……」
何とか諦めて頂こうと、琢磨が切り出すが。
「おお、其れならば御心配無く!私、幼少より父に隠れ武器に関する書を収集して居りましたので、基本的な知識は御座いますぞ」
明るい表情と共に、得意気に笑って見せる縁。そうなのだ。語る様に、縁は幼い頃よりそちらへ傾倒して居たもので。其れを聞かされた琢磨は、表情を引きつらせ。
「さ、左様に御座いましたか……」
引き下がってしまう不甲斐無さ。隣で頭を悩ませる大志。だが、其処へ望が徐ろに口を開いた。
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