抗えぬ現実。

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「早速本題です……叔母上が語られた不安が、現実のものとなりそうです」  其の言葉、紫電は桜花を真っ直ぐに見据え受け止める。只、膝元にある手は震える拳に変わって居た。そして、其の傍らの白雪も深い呼吸と共に静かに瞼を閉じて。 「そうか……」  そう、静かに一言呟いた。桜花の報告を耳にする迄、僅かにあった期待。其れが、二人の中で音を立て崩れ行く。しかし、其れは最初に報告を聞いた桜花も同じ事。今此の場で冷静に語れる程、まだ心は追い付いて居ない。其れでも、直ちに告げねばならなくなった現実。桜花の傍らへ控える富士も、苦し気に瞼を閉じそんな景色へ顔背けてしまう程で。 「姉上。主犯はやはり、屠龍なのですか」  紫電の声であった。心は未だ乱れたまま。しかし、問わねばならない。其の答えを受け止めねばならないと。桜花にも、紫電の思いが伝わるのだろう。桜花は、心を鎮める様に深く息を吐いて。 「ええ」  肯定の只一言を。其れは紫電にとって、何より重く大きな一言となり胸の奥へ響く。構えていても、やはり過酷なものだった。心も瞳に映る景色も、一瞬全てが闇に包まれる感覚に囚われて。  そして、更に続く桜花の報告。 「そして、もう一つ。今回は危険な任務な上、早急な情報収集を要したので、隠密を二人派遣しましたが……内一人の報告が途絶えました」  空気が一気に張り詰め、息苦しい程に重く感じた一瞬。危険な任務、其れは対象が元治安維持部隊員である事だ。彼等は、特殊な戦闘任務を想定し、あらゆる訓練を超えて来た東屈指の戦闘員。優秀な隠密であれ、治安維持部隊員を相手とするのは相応の覚悟が居る。故に、桜花も慎重を期したが。 「姉上……其れは……」
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