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先を問う事へ躊躇いが出た紫電。桜花の答えは。
「まだ確証はありません。ですが、帰還命令最終日迄信じて待つつもりです」
不安は濃いが、答えは出ていない。どうか、命を持って帰って来て欲しいと。紫電も、其れ以上の声は上げず頭を下げる事で答えるに止めて。皆、暫し言葉が出なくなる。其れ程に、事態の深刻さと衝撃は強い。其れでも、白雪が徐ろに口を開いた。
「ならば、罪人の深雪送りは延期か……」
罪人の深雪送りとは、東にて存在する重犯罪人の刑罰の一つ。冬の盛りとなると、深雪の環境は一気に厳しくなる。其の深雪を郷とする者も、其の間は深雪を出て行く程なのだ。其れに伴い、罪人が其処での重労働を担う。命を繋ぐに与えられる慈悲は最低限、命尽きれば其処で刑は終えるが。故、場合に依っては極刑以上に苦しむ刑でもあるのだ。
しかし、其の疑念が確定した今不用意に深雪へ踏み込め無い。桜花も、其処は既に判断して居るが。
「ええ……ですが、深雪住民の移動が始まりますので……警護には、治安維持部隊の派遣を検討して居りますが……民が不安を覚えるやもと……」
民の確実な安全を考慮し、通常以上の厳戒態勢を取るべきかと。しかし、治安維持部隊出勤と言う事態を目の当たりに、民の心を不安にさせまいかとも。
「姉上。では、通常の刑事隊派遣に私が加わります」
紫電が、そう意見を出した。
「紫電、貴方……」
紫電を見詰めて、其の瞳に見える思いに桜花は複雑な表情。そんな桜花へ、紫電が続ける。
「屠龍が長なら、決して民達に危害は加えません」
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