国の為に。民の為に。

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 数多ある世界のひとつ。其所に存在する、広い広い大海に浮かぶそこそこ大きな島。此の島は、四季がある美しい処。元は島全体で『ひとつ』だったのだが、とある事がきっかけで國が東と西、二つに割れてしもうのだ。付かず離れず、曖昧な関係を続けていた両国。文化は酷似しているが、其々違う色を出していたと言う。  何より武の道を重んじ、世の先駆けとなる東の国。何より雅を重んじ、心豊かに在るべきとする西の国。其れは隣り合うも、全く異なる思想と文化を持つ二つの国。  長きに渡り背を向け合うたそんな両国に、転機が訪れた世があった。其の世で、東を統治していた帝が、西の帝へ歩み寄りを持ち掛けたのだ。時の帝は、異性同性間婚姻が罷り通る両国共通の法の下、西の帝の弟を后妃として向かえる事で、皇家同士の婚姻を成立させた。此れは、両国民の心迄も動かす大きな結び付きへ。しかし、当初は勿論手探り。様々な難問が立ちはだかった。其れでも世の両国帝は、ひとつひとつへ向き合い、共に解決を見出だしていった。其れを引き継ぐ次の帝も、又次の帝も、そして次と。そうして互いを認め、共に在る術を求めて。少しずつ、少しずつ。背を向けていた国同士が互いを振り返り、歩み寄り。  軈て、沢山の小さな一歩が大きな変化に繋がる。世代を越えての長い長い話し合いにより、漸く法や基本的な教育を一貫させる事が出来たのだ。只、互いの文化や歴史の尊敬や理解の為にも、帝と皇族は両国に存在するとして。だが、二つの国は遥か遠い嘗ての如く共に在る存在となっていたのだ。
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