国の為に。民の為に。

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 声が一瞬失われるも、落ち着きを取り戻し静かに口を開く。 「御即位、真に御目出とう御座いまする。桜花帝」  厳かに響いた祝いの思いを乗せた声。桜花の表情が、僅かに和らぐ。 「有り難う御座います。此方、弔事が続き改まった御挨拶が遅れました事を、心より御詫び致しまする」  頭を深く下げ、詫びる桜花へ一世が否を示し。 「いえ。東に続いた深い哀しみの前に、此方が物申せる事等ありませぬ故」  其の言葉を受け止め、再び頭を下げた桜花。其の身を改めると。 「其れにしても、急な再会が叶いましたな……事情を、御伺い致しとう御座います」  漸く、本題への促しを貰えた一世。再び手を地に付け拝をする姿へ。此れに桜花は、敢えて止めずに其の流れを見詰める。 「此度の酷い野分(のわき)による相次いでの災害に、作物の収穫が期待出来ず……現状、最早私のみの力では民の生活がままならぬのです。どうか、どうか!東の帝の御力を授かりたく……!」  懸命に額を付け懇願する一世と、其の頭上を見詰める桜花の瞳。桜花も此度の西に起こった不運は、隠密や大使より書簡報告にて周知して居た。故に、現在ある景色も近い内に眺めるだろうと予想もあったのだ。西の民の心象、我が民の心象にも関わる。  桜花が、徐に口を開く。 「西の大事、粗方伺っては居りまする。深刻な状況は真の御様子……現状を、把握出来るものは御座いますか」  静かに問う桜花へ、一世が懐へ忍ばせた書簡を取り出し差し出した。 「此方に御座る」  其れを受け取った桜花が、書簡を広げる。読み進めると、己が遣わせた大使、隠密の報告とも大体は一致する。桜花は、其の内容をより正確に把握し。
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