5点!?

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5点!?

「過去に告白して振られています、きちんと、気持ちを清算しました。……だから、もう好きじゃありません。安心してもらえますか……」  私と江口先輩はリビングにいた。  二人きりで、今がチャンスとばかりに私から意を決して切り出したのだ。  突然の私の発言に、江口先輩はやはりというべきか眉を(ひそ)める。  ぐっと歩み寄ってくると、マジマジと私の顔を見つめ、思い出したかのようにああ、といった。その間、私はどきどきとしながら、手のひらを固く結んで。 「……思い出した。高校の頃! 生徒会の! あー、芋っぽい会計の子、だったっけ。そうだ、最初にどっかで見たような気もしてたし。でも、あの時にメガネをかけてなかったっけ? コンタクトにした?」 「そうです……あの時から、だいぶ変わりました」  変えるようにした、というのが正解だけれども。  コンタクトにして外見も努力し変えた。服装も、メイクも、なにもかも。それは、先輩にいわれたからでなく、私のためにだ。  ……さりげなく芋っぽいといっていたけれども、そこはスルーした。  あれこれと聞かれて、やや気負いしながら先輩を追ってここにきたわけではない、偶然だと念を押す。 「んー……まあ、そっか。偶然なら別に。それに当時はね……」 「覚えて、ましたか」 「うんうん、なんとなく覚えてる。今は5点かな。告白してくれたよね、ずっと好きだったとか何とか……。でも、当時何点って俺いってた?」 「……当時18点っていわれました。でも、江口先輩、今は5点――、え、え? 下がってます?」  信じられず思わず私は江口先輩の顔を見た。  あれから必死の努力をしたのに……? 「だってさぁ、ここきた当初から俺に対する態度悪かったし。前の方がまだマシだったよ」 「……あっ……ですよね」   思わず笑いが込み上げる。  先輩の採点は相変わらず厳しい。江口先輩は相変わらず、先輩だ。  じんわりと私の中で、嬉しいという感情が広がっていく。  過去最高に、とても嬉しいという感情が。   そして点数が前より低かったことも相まって。  それはもう私の中では構わないと思えることが。  先輩の顔立ちは随分とあの当時と変わっていて、大人びていたし、さらにカッコよくなっていたと思う。けれど、それだけだ。当時のときめきや、切なさも苦しさもない。 ――それほどに、私はもう江口先輩のことを整理しきっていたのだ。  よかった。  私はもう別れることができた。  好きだった人への感情と。  そして過去の――私から。 「江口先輩、今の、採点……5点で嬉しいです。本当にありがとうございました」  思わず浮かべた笑顔で伝えると、江口先輩は到底理解できないといった表情で――私を眺めていた。
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