切り替えようよ

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切り替えようよ

「……瑛太のこと、やっぱり好きでしょ。臆病になったのは、俺のせい?」  そういって、江口先輩は私を覗き込んだ。  江口先輩はそのまま返答が上手くできなかった私に近寄ると、頬を手の甲ですうっと撫でてきた。 「表情が固いよ」と声のトーンを低くして。  あまりの展開に、いつもより演技が全くできていなかったかもしれない。そんなことを考えていると―― 「美奈」  突然の江口先輩からの呼び捨てに、私は首を傾げる。 「……どうしたんですか?」 「オムライスが食べたいな」 「いえ、そうじゃなくて。呼び方です、どうして呼び捨てで?」 「卵ある? 一緒に作ろうよ、美奈」  ……なんと、スルーされてしまった。しかも、もう1回呼んでるし……。 「……オムライスなら学食であるじゃないですか。いつでも食べれ――」 「今、すごく食べたいんだよね」  そういって、私の話をぶった切ると、江口先輩はニカっと笑った。 「ええと」  脳内をフル回転させて、いわんとすることを探る。 「いつも瑛太と買い物に行ってるんだろ? 今日は俺と行こうか?」  これは気分転換をしよう、という江口先輩なりの配慮だろう。そうか、ここの男性陣はイケメン神対応が当たり前のように、本当にさりげなくできる感じだ。それは確かにモテるはずだ。  私はそこでようやくその結論に達して心の中で落ち着くと、頷いた。 「材料は家にあるので……行かずとも大丈夫です。でも、それなら是非とも作りましょうか。オムライスを、一緒に!」 「そうこなくっちゃね」と、江口先輩は私の背中をバンと大きく叩いて。
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