「本当の」友達

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「本当の」友達

 フライパンに溶いた卵をサッと入れ、半熟の状態で取り出す。 「江口先輩、卵が足りないのでは? 4個食べたいだなんてワガママいうから……」 「だってさ、まるごと全部に卵がのってないとオムライスっぽくないし」 「その気持ちはわかりますが……あ、でも冷蔵庫の奥に予備が1パックありました。全然、大丈夫です」  そうして私は江口先輩のお皿にサッと卵をのせる。 「ケチャップをかければ、あとは食べて大丈夫ですよ」 「せっかくだからさ、一緒に食べようよ。その方が美味しいじゃん」  さも当たり前のように、そういったモテ言葉がいえる江口先輩は凄い……。これで過去の私含め、一体何人が殺されたのだろうか……。  そうこうしているうちに、私のオムライスも完成した。フライパンから卵を移し、席に着く。 「じゃ、早速食べようか」  そういって私たちが互いの席につくと、リビングの扉が開く音がした。みやると清水くんが目をこすり、よろよろと私たちの方へ歩み寄ってきた。 「あ、起きたんですね。オムライス余ってますけど、食べますか?」    私がそういうと、清水くんは小さく頷いた。江口先輩は後ろに立ち、私の目の前に新しいお皿を出してくれた。この皿に清水くん分をよそえということだろう。席を立って、用意をする。 「美奈、ちょっと瑛太のご飯少なくない? もっと食べるから盛っていいよ」  その言葉に私は頷くと、チキンライスを追加する。そして、卵を乗せ私の向かいの席に置いた。 「……え、美奈、って?」    清水くんはそういって私と江口先輩を交互に見ると、(いぶか)し気な表情を浮かべる。 「……どうして……、いつの間に呼び捨て? 大塚さんを」 「何度いっても、そう呼ぶので諦めました」 「別にいいじゃん。呼びたかったら瑛太も美奈っていえば?」 「本人がいいならそう呼ぶけど……」  そういって、私の方をチラリと見る。  それは、どう……返答すればいいのだろうか。  江口先輩はさんざん拒否しておいて、清水くんはあっさりと受け入れるなんて……、そんなことをしたら私の気持ちが明らかにバレてしまうのでは……。  清水くんは私の方へきて、正面の席に座った。 「……それに江口と揉めたくない。友達だし」 「 いや、それはいい。でも俺らは友達だろ? それなら俺も、お前も――お互いに遠慮はいらない。それならどうだ?」  そういって、江口先輩は不敵に笑う。  黙り込んだままの清水くんはじっと――私を、見ている? 「瑛太、ちなみに俺はどんな卑怯な手段でも使うからさ。それでも恨みっ子なしで、よろしく」  江口先輩の含みを帯びたその言葉に、清水くんは「……そっか。江口らしくて、そっちの方が確かにいいかも」と、少しだけ嬉しそうに頷いた。
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