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清水くんは草食系・極み
ユキちゃんの部屋をノックし、ガチャリと開けられたドアから私は滑り込んだ。
はぁはぁバクバクと心臓がうるさく止まらない私とは対照的に、ユキちゃんは、いつも通りニコニコしながら出迎えてくれた。ぎゅう、っと抱き着くように助けを求める。「どうしたの……?」といい困惑しながらも頭を撫でられ、その親友のぬくもりに少しだけ心が落ち着いた。
深呼吸し、ようやく私はゆっくりとユキちゃんから離れた。
「ユキちゃん、清水くんのことで聞きたいことが」
「え、なぁに?」
「ほら、その清水くん……あんまり知らないけど、大学でもモテるんじゃないの? それにしては、なんかちょっと違和感が……」
「あー、清水……瑛太くんね。彼、私のこともずっと『飯田さん』呼びで崩さないの。告白する子も多いけど、のらりくらりとかわされて。なんといってもさあ」
ユキちゃんは、これから面白いことをいうのよ、とばかりにニヤリと笑う。
「彼、草食系男子だから」
「草食系……野菜しか食べない」
「それはベジタリアンでしょ」
あえてのボケに、ユキちゃんは突っ込んでくれた。
「それも極みっていう噂あって。草食系だけならまだいいのに、極みよ、極み。女の子に対する態度は絶対的にクールというか爽やかーーにみえるんだけど、女子勢がグイグイいっても食いついてくることは全くなくて」
「そ、そっか、それはなんだかわかる……!」
「あと、そう思ってるとちょっと抜けているところがあって、天然爆弾を投げてくることがあるっぽい。やられたことないけど」
……情報量が多すぎる。
なんとなくわかった、けど。何があったかは流石に言えない。
「あとは……駿くん、ああ、江口駿くんね。女の子にとにかく点数をつけるーー点数ハラスメントで有名な。78点以上の子しか付き合わないらしくて、私は48点だってさぁ、低いよね。まぁだから」
78点とは、えらく中途半端な点数を……。
気にもしないといった様子で、カラカラと笑う。過去の私の点数18点を思い返し、それはとても高い点数だよ、と言いたい気持ちをこらえる。
「異性でも一緒に住めるってのは、二人ともが眼中にないからかもね。それで私の彼氏も安心してるわけでさ」
なるほど。でもユキちゃんでも48点なら、78点ってどんな子なんだろう……?というか、満点を取れる女の子なんて、いるのだろうか。
「そういう意味で、清水くんは安全な危険人物かもね」
いやそれ結局、安全なのか、危険なのか……。
清水くんのことが結局はわからないまま、私は解決を求めるためにユキちゃんの部屋にきたはずなのに、いまだ混乱したままだった。
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