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第2話
ホーリーというのは、この伯爵家の庭師である青年だ。彼は背が高くて、体が大きいのに性格は気が小さく、心優しい人である。
彼がやったというのは、一体どういうことだろうか。それに、精霊の仕業だと言う。
「ホーリーがね、アルに変なのを飲ませたー」
「飲ませた……?」
「ああ。変なのではなく、ホーリーが良い薬草をもらったと言ってね。紅茶に煎じて飲ませてくれたんだ。なかなかに美味しかったよ」
アルトラがコニーの言葉を補足する。どうやら、紅茶に混ざっていた薬草が精霊と関係があるとコニー達は言いたいようだ。
「お茶を運んできたのはローザだったから、今シャルにホーリーを呼んできてもらってる」
アルトラの言葉にローザが申し訳無さそうに頷く。
シャルというのは、この屋敷を管理している執事だ。シクラーム伯爵家に代々仕えている者で、対応が早く、いつもとても助かっている。
「メイドとホーリー様がアルトラに持っていくお茶を淹れているところだったので、用があった私が代わりに運んできたのです」
「その薬草が入った紅茶を飲んだら、二人は子供の姿になってしまったということ?」
「そのようです」
ローザが項垂れる。兄であるアルトラをよく分からないことに不覚にも巻き込んでしまったことが、相当ショックのようだった。ローザ本人は自覚していないようだが、彼はかなりのブラコンである。
ライヒが慰めるように、よしよしとローザの頭を撫でた。
その時、シャルが扉をノックして部屋に姿を現した。すると、すぐにコニーとライヒが姿を消す。
「旦那様、ホーリーを連れて来ました」
「ああ、シャル。ありがとう」
シャルは青年ホーリーを部屋に入れ、一礼して静かに出て行った。扉が閉まると同時に、再びコニーとライヒが姿を現す。
そう実は、このシクラーム伯爵家は普通の伯爵家ではない。コニー達と深い関わりのある一族なのだ。彼らは人ではなく、精霊だ。精霊の中でも善良な花の精霊で、シクラーム伯爵家はシクラメンとヒイラギの精の加護を受けている。コニーはシクラメンの精で、ライヒがヒイラギの精だ。
シクラーム伯爵家は、代々精霊の姿が視える。コニーは、この伯爵家当主アルトラを主人として懐いている。また、ライヒは幼い頃からアルトラの弟であるローザを主人として認めているのだ。
さらには伯爵家の血は引いてないけれども、植物と会話ができて昔から精霊の姿も視えるセチアだけが彼らと会話ができる。普通の人にも精霊の姿が稀に視える人もいるため、彼らは伯爵家の中でも親しい者以外の前では姿を現さない。
だが、庭師のホーリーは大の植物好きで大事に庭の世話をしているからか、はたまた優しい人柄だからか、いつも彼の周りには色々な精霊が集まってくる。彼自身は精霊の姿は視えないが、声は聞こえるらしい。その当人は今肩を震わせながら、大きな体を縮めてアルトラの前で膝をついている。
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