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第4話
「じゃあ、そのプリンティーを見つけよっ」
「プリンティー探しー!」
コニーとライヒがクルクルと頭上を回る。精霊は楽しいことが好きだ。人を困らせたりするのも好きで、悪気があってやっていることが少ないので、少々困り者だ。
けれど、セチアは彼らの優しさも知っている。気に入った者に対しては、自分達の出来ることで愛情を示す。そんな彼らの素直さがセチアは好きだ。当然、その愛を受けているアルトラやローザのことも好きなのだ。彼らもまた様々な人へ、慈愛に溢れている人たちだから。セチアも彼らの温かみに助けられた側の人間だ。居場所を与えてもらった。だから、恩返しがしたい。その機会が今だ。彼らを元の姿に戻せるのは、精霊が視えるセチアしかいない。
セチアは、書物に書かれていたことを思い出そうとする。あと少しで思い出せそう……、という時にコニーが花を降らせた。
「プリンティー探し、楽しそう!」
コニーは楽しいことがあるとすぐに花を降らして、気分を表現する癖がある。
「コニー、何か探す手立てはないかい?」
アルトラが彼女を手の上に乗せながら、優しく聞く。ローザもライヒに尋ねる。
「ライヒも気配などは感じないですか?」
「知らなーい。気配は、もうこの部屋にはないよ」
「コニーも分からなーい。どうしよー?」
彼らの会話を聞きながら、セチアは彼女が降らせた花が近くに置いてあるティーポットに落ちるのを見つめた。花吹雪の中、白い衣をまとった者が舞っているようだった。
すると、何かが脳裏に浮かんだ。同時に、それまで項垂れていたホーリーが何かを思い出したように顔を上げる。
「そ、そういえば! 解毒剤のような植物が」
『解毒剤』と聞いて、セチアは手を叩く。
「そうよ! ホワイトポインセチアよ!!」
「「ホワイトポインセチア?」」
アルトラとローザの声が重なる。セチアは、紅茶の入っているティーポットを手にしながら、説明する。
「ホワイトポインセチアは、赤色のポインセチアと対になっていて、その昔あらゆる解毒剤として使われていたそうよ」
「赤色以外の色があること自体、初耳だな」
アルトラがセチアの話に興味を示す。
「ホワイトポインセチアは、赤色のとは少し育て方が違うから、花を咲かせるのは難しいのよ」
「なるほど、だからあまり見かけないのか」
彼は納得したようにうなずく。セチアは、ホーリーに優しく問いかけた。
「赤いポインセチアはどこで見つけたの?」
「庭の奥の方にある森の中です。気付いたら、何故か迷い込んでて」
精霊あるあるだ。人間を別の場所へ迷い込ませる癖がある。さらに厄介なことに、伯爵邸の庭はかなり広い。さすが花の精霊の加護を受けているだけあり、様々な花や木々が植えられている。庭師のホーリー以外の者は、よく迷子になると聞いたことがある。そのホーリーを迷い込ませたのだ。相当なイタズラ好きに違いない。
「コニー、ホワイトポインセチアを見たことがある精霊がいないか聞いてくれる? 後で好きな蜜をあげるから」
「分かったー! 聞いてくるー」
コニーは『蜜』と聞いて、嬉しそうな顔をしてすぐに姿を消した。精霊にお願い事をするときは、その代わりに値するものを渡す決まりが昔からある。コニーはハチミツが好物なのだ。ちなみに、ライヒは笹の葉などの食べられる葉っぱが好きらしい。
「僕は何かあるー?」
ライヒがセチアの肩に乗りながら、尋ねた。
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