お茶派の私は、ブラックコーヒーが苦手だった

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「パソコンとにらめっこしてると眼が疲れるわ」 突然と聞こえてくる声に私は驚く。 それは聞き慣れた声でもあった。 「青木くん、相変わらず声が大きいね」 「そうか、地声だけどな」 「内緒話は出来ないね」 「俺に内緒事はないよ、宮本そのおかき頂戴」 そう言いながら、青木はテーブルにおいてあるおかきを一つ手に取り、パクっと食べた。 彼の名前は青木大介で、同じ部署で働いている。 同期入社でもあるためか、くされ縁みたいな関係だ。 ちょっと声は大きいけれど、話しやすいし、そこそこイケメンだと思っている。 悪いところはないと思いたいが、彼のある姿を見て、私はどうしても一歩引いてしまう。 「コーヒー好きだね、それもブラックで飲むなんて、私には考えられない」 「そうか、美味しいぞ、チョコレートを食べながら飲むとちょうどいい味になるんだ」 「じゃあ私のおかき食べないでよ」 「コーヒーあげるよ」 「いらない」 「紗季ちゃんつれないな」 「名前で呼ぶなバカ、さぁ休憩終わり」 そう言って、私は給湯コーナーを離れ、事務所へと戻る。 ここが職場じゃなくて居酒屋だったら、話が盛り上がり、楽しく過ごせるだろうけど、一人でいたい時にあのテンションで来られると辛い。 それとあのコーヒー、せめて砂糖とミルクぐらい入れてよと思ってしまう。 コーヒーそのものが嫌なわけではない。 「なぜブラックなの」 同じ苦味だったらブラックコーヒーよりもお茶のほうが断然いい。 お茶派の私にとって、ブラックコーヒーそのものを受け入れることがどうしても出来なかった。
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