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そんなことを考えつつ、私は次の業務に移ることにした。
次の業務は、普段は奥さまがお世話をされているお庭の一角のお世話。主にお水をあげたり、雑草を抜いたり。そういう小さな作業。
奥さまの趣味はガーデニングで、お庭の一角にご自分のスペースを持っていらっしゃる。庭師に任せてしまってもいいのだけれど、それだと奥さまの意向が上手く伝わらない可能性がある。
というわけで、私は奥さまの意向を庭師に伝えつつ、一緒にお世話をして様子を見る……ということを引き受けていた。
この役割は私かマリン、どちらかが行うことになっている。まぁ、最近はとある事情から私のほうが多いのだけれど……。
庭園の端っこにあるのは、庭師たちが使用する道具が置いてある倉庫。その隣にある小屋は、庭師たちの休憩スペース。
私は小屋のほうの扉をノックしてみる。……返事はない。
「みなさん、出払っているのかしら……?」
そういうことは珍しくないので、別に焦ることはない。
ただ、この後捜しに行くか。はたまた、ここで待つか。その選択は難しいところだ。
だって、時間は有限なのだ。私は一刻も早く、奥さまの意向を庭師たちに伝えたい。ここで変に動き回ると、すれ違いになる可能性がある。でも、ここでずっと待っているのも、それはそれで時間の無駄で……。
そう思ってどうしようかと考えていれば、ふと後ろから「クレアさん?」と声をかけられた。
その声に、私は反応する。視線をそちらに向ければ、そこには穏やかそうな表情をした、一人の若い男性。
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