第2話 新米庭師

2/4
前へ
/8ページ
次へ
 そんなことを考えつつ、私は次の業務に移ることにした。  次の業務は、普段は奥さまがお世話をされているお庭の一角のお世話。主にお水をあげたり、雑草を抜いたり。そういう小さな作業。  奥さまの趣味はガーデニングで、お庭の一角にご自分のスペースを持っていらっしゃる。庭師に任せてしまってもいいのだけれど、それだと奥さまの意向が上手く伝わらない可能性がある。  というわけで、私は奥さまの意向を庭師に伝えつつ、一緒にお世話をして様子を見る……ということを引き受けていた。  この役割は私かマリン、どちらかが行うことになっている。まぁ、最近はとある事情から私のほうが多いのだけれど……。  庭園の端っこにあるのは、庭師たちが使用する道具が置いてある倉庫。その隣にある小屋は、庭師たちの休憩スペース。  私は小屋のほうの扉をノックしてみる。……返事はない。 「みなさん、出払っているのかしら……?」  そういうことは珍しくないので、別に焦ることはない。  ただ、この後捜しに行くか。はたまた、ここで待つか。その選択は難しいところだ。  だって、時間は有限なのだ。私は一刻も早く、奥さまの意向を庭師たちに伝えたい。ここで変に動き回ると、すれ違いになる可能性がある。でも、ここでずっと待っているのも、それはそれで時間の無駄で……。  そう思ってどうしようかと考えていれば、ふと後ろから「クレアさん?」と声をかけられた。  その声に、私は反応する。視線をそちらに向ければ、そこには穏やかそうな表情をした、一人の若い男性。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加