5.クリスマス

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5.クリスマス

「あっ!馬鹿お前っ!!」  悠哉の声に驚いた陽翔は、手に持っていた砂糖を勢いよくこぼしてしまった。 「って何やってんだよっ!」 「ぎゃーっ?!ごめん悠哉っ!!」  陽翔は慌てて布巾を手に取り、テーブルの上に大量にばらまかれた砂糖を片付けようとした。しかし陽翔の手がボウルに当たってしまった勢いでボウルが倒れ、中身まで無惨に床へ解き放たれてしまう。二次災害となったそれは先程計量した材料たちであり、陽翔はやってしまったという絶望を感じた。  今日は日曜日、悠哉の家へと訪れた陽翔は悠哉にクッキー作りを教えて貰っていた。何故陽翔がわざわざ悠哉に頼んでまでクッキー作りを教えて貰っているのか、それも慶へのクリスマスプレゼントのためだった。  クリスマス当日、慶に何を渡そうと悩んだ陽翔は手作りのお菓子をプレゼントしようと考えた。しかし陽翔にお菓子を作れるようなスキルはなく、悠哉に頼るしかなかったのだ。  悠哉は料理はもちろん、お菓子作りも得意だった。クリスマスになると毎年陽翔、そして陽翔の両親にクリスマスプレゼントとして手作りのクッキーを渡してくれており、陽翔自身も悠哉のお菓子作りの腕は重々承知していた。  悠哉に聞いたところ今年も陽翔の家にお菓子を渡す予定だと話していた、だから今年は陽翔も一緒になってお菓子作りを試みようと悠哉に頼み込んだのだった。最初は面倒くさがっていた悠哉だったが、なんだかんだ言って面倒見がいいために結局は陽翔の頼みを二つ返事で応えてくれた。  しかし料理すら作った事がなかった陽翔にとって、お菓子作りは無謀のようなものだった。手際が悪く何度も悠哉に叱られた上、砂糖をこぼしボウルまで倒してしまう始末だ。  悠哉は慣れた手つきで床にこぼれた残骸たちを片付けている。陽翔はしゃがみ込み「ごめん悠哉…」と布巾で床を拭きながら悠哉に謝った。 「ほんとお前って何やってもドジするよな」 「返す言葉がないです…」  自分の不甲斐なさにどうしようもなく悲しくなった陽翔はまともに悠哉の顔が見れなかった。そんな陽翔に悠哉は「ばか」と軽くでこをペシっと叩いた。 「お前のドジなんて今に始まったことじゃないしもう慣れたよ、ガチで落ち込むなよな」  悠哉は眉を下げ微笑んだ。そんな悠哉の柔らかい表情にドキッとした陽翔は「あー!テーブルの上も凄いことになってる!」と赤くなった顔を誤魔化すように慌てて立ち上がった。 「また最初から測り直しだな」  床を拭き終わった悠哉も立ち上がり、再び材料を手に取って計量を始めた。  陽翔は何を悠哉にときめいているんだ、とため息をつきそうになった。やはり悠哉のことが愛おしいという気持ちは陽翔の中に確かに存在しており、悠哉に恋人が出来た今でもそれは変わっていなかった。いつになったら悠哉への恋心を無くすことが出来るのか、陽翔には想像できなかった。
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